しなやかに公道を嗜む マセラティMC20 GT2ストラダーレへ試乗 60kg減量 10ps増強

公開 : 2025.03.05 19:05

914台限定のMC20 GT2ストラダーレ V6ツインターボは10ps増し ダウンフォース最大500kg 60kgダイエット しなやかに公道を嗜むことも可能 従来以上に深まった魅力 英編集部が評価

914台の限定 3.0L V6ツインターボは10ps増し

マセラティMC20 GT2ストラダーレを作るきっかけとなったのは、GT2ヨーロピアン・シリーズと呼ばれるレースだとか。少しややこしいが、これは主にアマチュア向けのカテゴリーで、GT3とGT4の中間に位置している。

ホモロゲーションを受けているモデルは、ポルシェ911KTMクロスボウ、メルセデスAMG GTなど。プロが戦う国際的なGTレースとは異なるが、マセラティも同戦向けのマシンを仕上げており、2023年から何度も勝利を重ねている。

マセラティMC20 GT2ストラダーレ(欧州仕様)
マセラティMC20 GT2ストラダーレ(欧州仕様)

そこで、このブランドのサーキット復帰を記念した仕様が、公道向けに生み出された。MC20 GT2ストラダーレは、914台の限定。英国価格は、通常のMC20より4万6000ポンド(約897万円)高い、27万3510ポンド(約5333万円)とのこと。

「このクルマは、沢山息を吸う必要があります」。デザイナーのフランチェスコ・モロシ氏は、向上した冷却性能について説明する。

フロントグリルなどが拡大され、メインラジエターへの気流は5%増やされている。インタークーラーは20%性能を高めたという。それ以外の改良も加えると、通常のMC20の2倍の冷却能力を有する。

ステランティス・グループが保有する、イタリア北部のバロッコ・テストコースで10周以上周回を重ねた場合、ブレーキフルードの温度は40度も低く保てるとか。「パフォーマンスの低下を回避できます」。モロシが続ける。

他方、3.0L V6ツインターボエンジンの最高出力は、10ps増しの640ps/7500rpm。これは、マッピングのアップデートで達成している。

ダウンフォースは最大500kg 60kgダイエット

リアウイングは、3段階の調整式。リアディフューザーやフロントスプリッター、アンダーボディなども専用アイテムとなり、280km/h時のダウンフォースは、フロント側で130kg。リア側では、ウイングの角度によって190kgから370kgを得られる。

最大で500kgに達するが、空気抵抗を示すCd値は0.38で不変なことに驚く。最高速度も、323km/hでほぼ変わらない。

マセラティMC20 GT2ストラダーレ(欧州仕様)
マセラティMC20 GT2ストラダーレ(欧州仕様)

サスペンションのスプリングレートは10%引き締まり、それ以外のハードは再チューニングを受けている。機械式のリミテッドスリップ・デフが標準だが、試乗車にはオプションの電子制御デフが組まれていた。

もちろん、軽量化にも抜かりはない。2脚のシートは、サベルト社のカーボンファイバー製へ置換され、20kgのマイナス。前が245/35 R20、後ろが305/30 R20というサイズのミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2Rタイヤは、合計5kg軽いとのこと。

さらにカーペットを省き5kg、センターコンソールも専用品で、2kgを削っている。合計で60kgダイエットしつつ、インテリアには上質なアルカンターラが多用されている。これは、太陽光の反射を抑えることが目的だが、雰囲気もイイ。

バタフライドアを開き乗り込むと、新しいバケットシートのポジションは低く、レーシングカー・ライクに姿勢は起き気味。サーキットを走る場合は、腰回りのサポートがもう少し欲しいかも。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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