【概要、本質、期待!自動車ニュースを読む】PCA(アウディ、VW、ポルシェ)とLEP(レクサス)、急速充電ネットワークで提携

公開 : 2025.02.19 12:05

毎日のように発信されるプレスリリース。その中から1本をピックアップし、概要、本質、期待の3項目で分析するコラムです。ジャーナリスト橋爪一仁が、4社から発表された急速充電ネットワーク提携のニュースを解説します。

【概要】PCA(アウディフォルクスワーゲンポルシェ)とLEP(レクサス)が急速充電ネットワークで業務提携

アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェが加盟するPCA(プレミアム・チャージング・アライアンス)急速充電ネットワークと、レクサス(トヨタ自動車)が展開するLEP(レクサス・エレクトリファイド・プログラム)急速充電ネットワークが、ローミングパートナーとして業務提携するために覚書を締結した。

今回の提携によるサービスは、2025年7月からのスタートが予定されていて、PCAとLEPの各会員が対象(PCAは月額会員のみLEPの急速充電器の利用対象)。全国371拠点に設置されたPCAの急速充電器(出力90~150kW)と全国188店舗のレクサス販売店に設置されたLEPの急速充電器(出力50kW以上)を、ユーザーが既に利用しているアプリへ追加手続き等をせずにそのまま相互に利用することが可能になる。

LEP(レクサス・エレクトリファイド・プログラム)の充電ステーション。
LEP(レクサス・エレクトリファイド・プログラム)の充電ステーション。    レクサス

今回の発表は、PCAと自動車の各ブランド(アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、レクサス)から同時に2025年2月14日のプレスリリースによって発信されており、各ブランドからは急速充電ネットワークの業務提携に関連する独自の取り組みについても合わせて発表されている。

アウディは急速充電施設『アウディ・チャージング・ハブ』の拡充、フォルクスワーゲンはフル電動ミニバン『ID.バズ』の(今夏)日本導入予定、ポルシェも急速充電施設『ポルシェ・ターボチャージングステーション』の拡充、レクサスは近隣の商業施設とも連携した急速充電施設『レクサス充電ステーション』の拡充といった内容をそれぞれ打ち出した。

【本質】業務提携の背景にあるBEV普及に向けた課題

現在、自動車においてもSDGsやカーボンニュートラルといった環境対応からLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の基調が強まり、原材料資源の確保から生産の各工程、調達に伴う物流、販売活動、ユーザーによる使用、走行、アフターサービス、リサイクルやリユースと廃棄、他、それぞれに必要とされるエネルギーに至るまでの全ての工程が重要視されている。

LCA観点でのBEV(バッテリー型電気自動車)普及にあたっては、各国の電源、発電政策も密接に影響するため、化石燃料による火力発電が70%ほどを占める日本、ウクライナ危機に伴い天然ガスが供給されず石炭への切り替えによる火力発電時の排出ガス(CO2)が増える欧州はそれぞれ課題を抱えている。

今夏日本導入予定のBEVモデル、フォルクスワーゲンID.バズ。
今夏日本導入予定のBEVモデル、フォルクスワーゲンID.バズ。    フォルクスワーゲン

また、トランプ新大統領による政策の軌道修正や、テスラBYDなど新興メーカーの台頭などから、日本や欧州の既存自動車メーカーを取り巻く環境は厳しく、ホンダ日産及び三菱自工の経営統合が協議された一因にもつながる。

依然としてハイブリッドやICE(内燃機関)モデルの人気が高い日本では、2024年のBEV販売台数が5万9736台と前年比32.5%減の状況で堅調とは言えず、走行中に排出ガスを出さないZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)のひとつで未来が有望視されるBEVを増やすことは日本の自動車産業の命題でもある。

その動向を左右するユーザーの『利便性』や『経済合理性』を向上させる必要性は高く、技術面では充電時間短縮に向けた充電器と車両の性能向上も求められる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    橋爪一仁

    Kazuhito Hashizume

    ジャーナリスト。自動車業界を経て現在はアビームコンサルティング(エグゼクティブ・フェロー)。企画業務を中心に自動車のブランド・オリジナリティ時代におけるCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等の幅広い領域を研究、アドバイザー業務を中心に活動中。特に自動車を経済と技術の側面から分析するのが専門。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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