節度ある強刺激 AMG CLE 53 x CLK 63 AMGブラックシリーズ(2) 想像以上に高い臨場感

公開 : 2025.03.01 09:46

AMGの栄光を体現したCLK 63のブラックシリーズ 豪華な内装から想像する以上に臨場感の高いAMG CLE 53 アグレッシブなボディに秘めた実態は 英国編集部がDNAの現在を探る

インテリアから想像する以上に高い臨場感

メルセデス・ベンツCLK 63ブラックシリーズは、サーキット・スペシャルな操縦性を実現しつつ、ドライバーへの要求度はさほど高くない。手のひらには、粒の細かい情報が届けられる。ワイドなボディの動きが、ドライバーの身体へ伝達される。

コーナーへ飛び込めば、リアアクスルのグリップが弱まり、スライドが始まる瞬間をキャッチできる。更にパワーを加えてアングルを深めるか、右足を緩めて行儀良くするかは、ドライバー次第。ESPがオンのままでも、アスファルトにはゴムの跡が残される。

ホワイトのメルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズと、グレーのメルセデスAMG CLE 53 4マティック+
ホワイトのメルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズと、グレーのメルセデスAMG CLE 53 4マティック+    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ストレートでは、1760kgという軽くない車重を忘れるほど、速度は急上昇。試乗時間の終わりが迫ることが、筆者は残念でならなかった。正直、降りたくない。2025年でこんなに感動できるなら、2007年にはどれほど人々を驚かせたのだろう。

最新のメルセデスAMG CLE 53には、ここまで濃密な個性は備わらない。だが、走りのダイナミックさは本物。まったく引けを取らない。

4マティック+と呼ばれる四輪駆動システムは、リアルタイムに前後アクスルへ伝わるトルクを変化させるが、基本的にはリア寄り。後輪操舵システムも巧妙に機能し、ラグジュアリーでデジタルなインテリアから想像する以上に、臨場感は高い。

CLK 63ブラックシリーズと比べると、遥かに扱いやすく感じる。バックカメラも備わり、市街地でも取り回しやすい。

ターボラグはほぼ皆無 高回転域で満たされる

それでも、どのドライブモードを選択しても、乗り心地はシリアス。スポーティな状態にすれば、3.0L 6気筒エンジンの咆哮が前方から響いてくる。

自然吸気ではないことを、ターボチャージャーの高音が教える。伝統の6.2L V8エンジンに匹敵する、好戦的な音響体験ではないものの、AMG CLE 53のサウンドも聴き応え充分だ。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

22psアシストされるマイルドハイブリッドで、電動スーパーチャージャーも備わるから、ターボラグはほぼ皆無。低域から充分にトルクフルだが、より高い回転域まで引っ張ることで、盛んなドライバーも満たしてくれる。

0-100km/h加速は4.2秒。CLK 63ブラックシリーズより0.1秒速い程度だから、勢いは猛烈なほどではない。最高出力は60ps近く低く、車重が165kgも多いことが一因といえるだろう。だが、筆者はその僅かに節度のある感じが好きだ。

一部の高性能モデルのように、普段使いで困るほど野蛮ではないものの、最高水準の走りを存分に味わえる。シャシーの限界を探れる。

CLK 63ブラックシリーズと並べると、パッケージングの高さは別次元。少し優等生すぎるかもしれないが、途中で一旦整理する必要があるほど、各コンポーネントの設定は多様。自分好みに、理想的な体験へ導くことも可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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