A110Rチュリニに乗って思った、アルピーヌの奇跡【新米編集長コラム#20】

公開 : 2025.02.23 07:05

A110は『バランス命』のクルマ

そういった状況下で、先日日本でも発売になった『アルピーヌA110Rチュリニ』に乗る機会があった。以前発売されたA110Rと基本的には同じで、カーボンホイールがアルミホイールへと変更され、取材車はオプションのOZ製ホイールと、アクラポビッチ製エキゾーストシステムが装着されていた。詳しくは吉田拓生さんのレポートも参照頂きたい。

A110は『バランス命』のクルマだと思っていて、絶対的な軽さを武器に、リアミドシップに適度なパワートレインを組み合わせ、初手から完成度の高さを見せつけてきた。だから、スポーティなA110Sは足が硬すぎると感じてしまい、最初はA110Rにも期待していなかった。

様々なエアロパーツ追加により、吸い付くようなコーナリングを実現している。
様々なエアロパーツ追加により、吸い付くようなコーナリングを実現している。    山本佳吾

ところがエアロパーツの効きが素晴らしく、明らかなダウンフォース向上が公道でも感じられ、吸い付くように曲がる、とにかく楽しいハンドリングマシンになっていて驚愕したのだ。表現を変えるならば、優秀なレーシングエンジニアが本気で仕上げたと思わせる、ベースのA110とは別次元の『バランス命』を見せつけたのである。

今回も乗っていて、硬いけど柔らかい懐の深さを感じさせる足まわりに感動。いかにもコストがかかっているイメージで、本当にいいアシだなぁと思う。エクステリアもやる気に満ちた雰囲気で、こちらに元気がないと気後れしそうなほどだ。ところが、乗っていたらどんどん元気になってきて、帰り道で遠回りをしたくなった瞬間に、このクルマに惚れてしまったと気が付いた。

常日頃、今新車で買いたいクルマはマツダロードスターとアルピーヌA110の2台しかないと言い続けてきた。他にも欲しいクルマはたくさんあるが、『たった今』という条件を加えたときに、この2台には明確な理由があると思うからだ。

ロードスターの話は機会を別に譲るが、A110は、二度とこういうクルマが現れないことが確実だからである。もちろんバランス命のドライバビリテイが素晴らしいことは、書くまでもないだろう。

これまで買うならロングツーリングにも適したA110GTだと思っていたのだが、二度のA110R試乗で、すっかり参ってしまった。もちろんA110Rチュリニの1610万円~という価格は、ベースのA110が1040万円~だから、なかなか高いハードルではある。しかし、本当にモデルライフ終了が迫っていて、そしてこれがかつて見たあのディエップ工場からやってきていると考えれば、決して高くはないと感じるのであった。

SPEC:アルピーヌA110チュリニ

●全長×全幅×全高:4255×1800×1240mm
●ホイールベース:2420mm
●車両重量:1100kg
●エンジン:直列4気筒DOHCターボ
●ボア×ストローク:79.7×90.1mm
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6300rpm
●最大トルク:340Nm(34.6kg-m)/2400rpm
●トランスミッション:7速DCT
●燃料タンク容量:45L
●駆動方式:後輪駆動
●サスペンション:F&Rダブルウィッシュボーン
●ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク
●タイヤサイズ:F215/40R18 R245/40R18
●ホイールサイズ:F7.5J×18 R8.5J×18
●車両価格:1610万円~

取材車はオプションのOZ製ホイールを装着。エキゾーストはアクラポビッチ製だ。
取材車はオプションのOZ製ホイールを装着。エキゾーストはアクラポビッチ製だ。    山本佳吾

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。

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