「4モーター」BMW M3の試験台 ビジョン・ドライビング・エクスペリエンスへ同乗 トルクは1831kg-m

公開 : 2025.03.02 19:05

クルマを一元管理するハート・オブ・ジョイの試験台となる、4モーターのコンセプトカー 最大トルクは1831kg-m 5基のファンでダウンフォース1.0t以上 英編集部が助手席で新技術を体感

クルマを一元管理するハート・オブ・ジョイ

BMWは先日、ビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(以下:VDE)という名のコンセプトカーを発表した。ボディを路面へ押し付ける電動ファンを実装した、クワッドモーターの高性能バッテリーEVだ。

間もなく発表予定にある電動のBMW M3を含む、次世代ノイエクラッセ・シリーズの技術を洗練させるために作られた。実際、4モーターという構成は、近未来のM3と一致している。

BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)
BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)

VDEは、走る試験施設として機能。低く屈んだボディではないことも、特筆すべき点だろう。ただし、スペックなどは発表されていない。

この中心的な存在が、駆動用モーターやバッテリーといったドライブトレインと、動的特性を一元管理するコンピューター・システム、「ハート・オブ・ジョイ」。ノイエクラッセ・シリーズとなる、次期iX3と3シリーズから実装が始まる。

BMWの開発責任者を務めるフランク・ウェーバー氏は、「運転の楽しさの次元を引き上げ、更にその先へ推し進めます」。と、ハート・オブ・ジョイへかける期待を表現する。

今回AUTOCARは、VDEへの同乗機会を得られた。運転席へ座るのは、開発ドライバーのイェンス・クリングマン氏。「技術者は、このクルマが何馬力あるのかも教えてくれないんですよ」。と笑う。

「でも、かなりハイパワーです」。タイヤからスキール音が発せられる。激しい加速で、助手席の筆者は内臓の位置がズレそうだ。

4モーターに5基のファン 最大トルクは1831.1kg-m

VDEはかなり大きい。寸法的にも、意味的にも。スタイリングは、ここ数か月に渡って様々な試験施設で評価されているであろう、次世代の3シリーズへ近い。先述の通り、4モーターという構成は次期M3へ通じている。

だがBMWの技術者は、M3のプロトタイプではないと強調する。あくまでもノイエクラッセ・シリーズへ向けて、多くの先進技術を極限的な環境で鍛え上げるための、試験台なのだという。

BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)
BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)

そのため、最近までは完全な秘密下に置かれていた。こうして筆者を助手席へ座らせたということは、お披露目できるタイミングになったのだろう。スペックまでは、公にできないとしても。

筆者へ伝えられた性能的な情報は、各アクスルへ1基づつ駆動用モーターがレイアウトされ、システム合計の最大トルクが1831.1kg-mに達することだけ。3桁ではなく、4桁だ。最高出力や0-100km/h加速も凄まじいことは、想像に難くない。

そして、インペラーと呼ばれる電動ファンが5基実装されている。ファン1基につき、50kWの電力を必要とするらしいが、得られるダウンフォースは合計で1.0t以上。過去にない、鋭いコーナリングを可能にするという。

この桁外れのトルクとダウンフォースは、ハート・オブ・ジョイが管理する。BMWが、パワートレインと動的特性の制御を統合する試みは、今回が初めて。開発技術者のクリスチャン・タルマイヤー氏によれば、完全な自社開発なのだとか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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