「4モーター」BMW M3の試験台 ビジョン・ドライビング・エクスペリエンスへ同乗 トルクは1831kg-m

公開 : 2025.03.02 19:05

助手席での体感はラリークロス・マシン

こんなインタビューを思い返しながら、VDEの助手席で筆者は高速移動している。車内は驚くほど快適。スポーツシートの座り心地は、かなりいい。ダッシュボード上では、初めて見るバージョンのiドライブ・システムが稼働している。

アメリカ東部、サウス・カロライナ州スパータンバーグにあるBMWのテストコースを、VDEは疾走する。ストレートでは、ワープするように速い。内装は、BMWらしい上質な雰囲気にある。

BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンスと、開発ドライバーのイェンス・クリングマン氏
BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンスと、開発ドライバーのイェンス・クリングマン氏

だがハート・オブ・ジョイがどのように機能しているのかまでは、助手席では理解できない。運転するクリングマンも、気温が低くグリップ力が充分ではないと認める。公道用のタイヤを履いていることも、能力を制限していると話す。

それでも、体感としてはラリークロス・マシンのよう。4モーターのM3は、この印象の延長にあるのだろうか。インペラーから、ジェットエンジンのようなサウンドが響く。

ピットへ戻ると、5基のインペラーを観察させていただいた。止まった状態で直近から聞く音量は、ジェット旅客機のエンジン直下と同等かもしれない。とはいえ、これが量産車へそのまま移植されることはないらしい。

「高価すぎるシステムです。これは、VDE専用ですね。ダウンフォースも大きく、トルクが大きいクルマでは、理想的な加速が難しくなります。わたしたちの関心は、ソフトウエアがこの車両の加速をどう処理するかなのです」

「あくまでもテスト用マシン。開発速度を高めるための、要素の1つに過ぎません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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