サーティースが見た2枚のメーター フェラーリ330 GT 2+2(2) 重層サウンドが最高のBGM

公開 : 2025.03.16 17:46

2輪と4輪で世界一の王座を掴んだレーサー、ジョン・サーティース氏 スクーデリア・フェラーリとの契約で乗った330 GT 2+2 非レストアのほぼオリジナル 英編集部が逸話を振り返る

骨盤の骨折と腎臓の破裂 翌年に復帰

1965年シーズンのF1は、ジョン・サーティース氏にとって望まない結果で終えた。9月25日にカナダ・モスポートパーク・サーキットでローラT70を運転中、フロント・アップライトが破損。クラッシュし、骨盤の骨折と腎臓の破裂という重症を負う。

アメリカとメキシコでのF1グランプリは欠場。最終的なドライバーズ・ランキングは5位、マニュファクチャラーズ・ランキングで、フェラーリは4位となった。

フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)
フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

悲惨な事故にも関わらず、サーティースは1966年に復帰。3.0Lエンジンを搭載した最新のF1マシン、フェラーリ312をドライブする。英国シルバーストーン・サーキットでは、ジャック・ブラバム氏に次ぐ2位でフィニッシュ。ベルギーでは優勝している。

スクーデリア・フェラーリとの契約では、F1だけでなく、スポーツカー・レースへの参戦も義務付けられていた。それに則り、1966年にはフランスのル・マン24時間レースへも出場が決まった。

ところが、チームマネージャーのエウジェニオ・ドラゴニ氏との関係性は、当初からあまり良好ではなかった。ドラゴニは、フィアットのアニェッリ家と親交が深く、サーティースとエンツォとの距離が縮むことを、妬んでいたのかもしれない。

2015年のインタビューで、彼はこう振り返っている。「ライバルのフォードは、本物のレーサーが運転しています。相手へ勝つ唯一の方法は、フラッグが振られた瞬間から全力で走ることだと、(ドラゴニへ)伝えました」

完全に失われたドライブトレイン

「しかし、ジャンニ・アニェッリさんの観戦を知ると、コ・ドライバーでアニェッリ家の親戚だった、スカルフィオッティさんをスターティング・ドライバーに選んだんです。自分の方が速いと訴えましたが、ドラゴニさんの考えは変わりませんでした」

「自分は330でマラネロへ走り、ザ・オールドマン(エンツォ・フェラーリ氏)へ会いに行きました。フェラーリへ加わったのはレースへ勝つためで、政治的な関わりのためではないと、伝えましたよ。それが、(フェラーリとの)別れでした」

フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)
フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

サーティースは、再び北上し英国へ帰国。GT40を擁するフォードは、イタリア勢を圧倒し、総合優勝から4位までを独占した。記録は定かでないが、グレートブリテン島へ渡ったシャシー番号6981GTの330 GT 2+2は、1967年前後に売却されている。

購入したのは、スイス在住のとある人物。交通事故に遭遇し修理を受け、その後はアメリカへ。1970年前後に、フェラーリの輸入代理店を営むルイジ・キネッティ・モーターズ社が仕入れると、ウィリアム・A・チザム氏が買い取っている。

カリフォルニアへ運ばれた330 GT 2+2は、093 AGTのナンバーで登録された。2000年6月に、ギャリー・ロバーツ氏が購入。その時点で、ドライブトレインはエンジンブロックしか残っていなかったらしい。

レストア前提のまま、4名のアメリカ人のもとを転々としたが、現在のオーナー、アラン・キャタロール氏が引き取る。アメリカ中部のミズーリ州で発見され、エンジンブロックも失われた状態だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ330 GT 2+2の前後関係

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