サーティースが見た2枚のメーター フェラーリ330 GT 2+2(2) 重層サウンドが最高のBGM

公開 : 2025.03.16 17:46

サーティースの記憶がそのまま刻まれた車内

キャタロールは330 GT 2+2をグレートブリテン島へ運び、ティーポ209エンジンを調達。トランスミッションも用意し、フェラーリを得意とするニューランド・モーターズ社のビル・グッドオール氏によってボディ内へ収められた。

当初のトランスミッションはシングルマウントだったが、その後ダブルマウントのユニットへ交換。V12エンジンはヘッド周りのリビルドが実施され、330 GT 2+2はサーティースが飛ばしていた頃の性能を取り戻している。

フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)
フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ナンバーは、当時のHVK 506Cを再取得。ひび割れしたボディの塗装は、完全なオリジナルだ。シャシーや内装も、殆ど新車時のまま保たれている。サーティースがマラネロから連れ帰った頃の記憶が、文字通り、そのままクルマへ刻み込まれている。

1960年代のフェラーリで、筆者が特に美しい1台だと考えているのが、この330 GT 2+2。250 GTEほどボディは角が立っておらず、技術的には優れる275 GTBよりプロポーションが美しい。4灯のヘッドライトが、後期の2灯以上の風格を漂わせる。

サーティースが交換したアルミホイールは行方不明で、純正のボラーニ社製ワイヤーを履いている。ピレリ・タイヤは15インチで幅205の、純正サイズ。このボディの趣を残すため、キャタロールはボディへワックスオイルを丁寧に塗り込んでいる。

珠玉のエンジン 極めて高い製造品質

半世紀以上前のフェラーリは、珠玉のエンジンを中心に作られたスポーツカーだと認識されているかもしれない。しかし、製造品質も劣らず極めて高いことに唸らされる。きっちり揃ったボディパネルの隙間から、スイッチ類のタッチまで、高水準にある。

同時期のメルセデス・ベンツには届いていないとしても、かなり近い。唯一、オリジナルではないステアリングホイールが惜しい。またキャタロールは、フロントシートを250 GTE用に交換している。

フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)
フェラーリ330 GT 2+2(1964〜1967年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ダッシュボードには、300km/hまで振られたスピードメーターと、6600rpmでレッドラインのタコメーター。これは、サーティースが見つめていたアイテム、そのものだ。

筆者は今回、そこまで気張って走らせなかったが、シャシー番号6981GTが全体的に好調なことは間違いないだろう。V12エンジンはすぐに始動し、安定して回転。3連ウェーバー・キャブレターが、繊細にガソリンを供給する。

補修中ということで、5速MTのシフトレバーにゲートガイドは付いていない。各ギアを選択するには、レバーをしっかり押し込む必要がある。しかし、クラッチペダルは重すぎず、ヒール&トウも難しくない。

ステアリングホイールは、ハイレシオで低域では重いものの、お約束どおり速度が上昇すれば意のまま。カーブが連続するテストコースを、豊かなフィードバックを頼りに駆け抜けられる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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