V12を直で! フェラーリ 12チリンドリ・スパイダーへ試乗 最上級フォールディング・トップ

公開 : 2025.02.27 19:05  更新 : 2025.02.27 22:14

6.5L V12エンジンの咆哮をダイレクトに鑑賞

フォールディング・トップは、45km/hまでなら、走行中でも開閉可能。約14秒で、動作は完了する。オープン状態なら、世界屈指の6.5L V12自然吸気エンジンの咆哮をダイレクトに鑑賞できる。

ただし、本域の響きが放たれるのは、積極的なドライブモード時のみ。9000rpmを超えると、滑らかなクレッシェンドへ浸れる。ボディ剛性はクーペに劣るとしても、作られる12チリンドリの半分はスパイダーになるという、フェラーリの推測へ納得できる。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)

アクセルレスポンスは、3速や4速になると、過激さが抑えられ扱いやすくなる。速度上昇もリニアだ。一般道の速度では、このギアを常用することになるが、音響と相まって運転体験が濃いものになる。

812 スーパーファストほどではないが、いうまでもなく圧倒的に速い。最高出力は830ps/9000rpm、最大トルクは69.0kg-m/7250rpmがうたわれる。ここまで回って、しっかり力を振り絞れるエンジンは限られる。

0-100km/h加速は3.0秒。最高速度は339km/hに達する。ブレーキペダルの感触も、バイワイヤ制御だが、踏みごたえがあり強力に効き好ましい。

8速デュアルクラッチのトランスミッションも素晴らしい。穏やかなドライブモードでは、滑らかにギアを切り替えてくれる。気張ったモードでの、レスポンスとチョイスはいうことなし。エンジンの回転数も、完璧に同調してみせる。

然な操縦性は維持 シャシー中央に座る感覚

えた車重と、上昇し後方へ移動した重心位置を考慮し、サスペンションはクーペと僅かにチューニングが異なる。それでも、クーペの自然な操縦性を可能な限り受け継ぐよう、技術者は尽力した。

現代のフェラーリは、往々にして乗り心地が良いが、これも例外ではない。12チリンドリには、荒れた路面用のダンパーモードがあり、ドライブモードを問わず乗り心地をなだめてくれる。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)

フォールディング・トップを開くと、ボディの剛性感が僅かに弱まる。格納されたルーフがリア周りを補強する役目をし、開口部がしなる感じを伴う。

オープン状態での、風の巻き込みは最小限。リアウインドウは開け閉めできるが、デフォルトでは半分ほど閉まった状態になる。この高さが、一番首周りへ吹き込む風が小さい様子だった。

ステアリングレシオは、ロックトゥロックが2回転弱。適度に軽くクイックだが、神経質さはない。ホイールベースは812 スーパーファストより20mm短く、着座位置はリアアクスルへ接近しているものの、鼻先が遠くには感じられない。

ドライバーは、シャシー中央に座っている感覚。アクティブ後輪操舵システムと、フェラーリ独自の魔法のような技術力の賜物だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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