アルピーヌA290:現実的なEVの最適解 ベスト・ファンEV(3) 「A」の期待を裏切らない

公開 : 2025.03.14 19:05

技術進化とともに、バッテリーEVの運転体験も楽しさ上昇中 現実的な価格帯で探せる2025年のベスト・ファンEVは? アルファからミニ、アルピーヌまで 英編集部がベスト5を選出

1位:アルピーヌA290 現実的なEVの最適解

うれしい結果が導かれた。強敵を抑えて、ニューフェイスが新たなベンチマークに設定された。ただし、この順位は圧倒的な差で決まったものではなかった。1日をかけて英国編集部の4名で比較し、厳密に評価を重ねて引き出されたものだ。

2025年のベスト・ファンEVは、アルピーヌA290 GTS。動力性能に関しては、同僚の間で意見が別れた。それでも具体的な順位を決める段階では、4名の意見は一致した。

ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ、グレーのクプラ・ボーン VZ
ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ、グレーのクプラボーン VZ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

配点を振り返ると、A290に最高得点を与えたのは2名。残りの2名は、ミニ・クーパー SEを選んでいた。しかし動力性能と操縦性、実用性、クルマとしての個性、総合的な運転の楽しさという、今回設けた5つの評価軸のすべてで、A290は高い得点を得ている。

ライバルが特定の分野で苦戦する中で、A290は平均的に優れていた。2025年における運転の楽しいバッテリーEVとして、車重や馬力、大きさ、価格のベストバランスにあるのかもしれない。目下の、現実的な最適解にあるモデルだと評していいだろう。

この素材を生み出したのは、ホットハッチの楽しさを古くから知る、フランスのルノー。味付けをしたのはアルピーヌ。とても納得できる結果なようにも思う。

印象的な技術力と洗練度が小さなボディに

アルピーヌには、各ライバルを上回る強みもちゃんとある。クーパー SEにはない、リアドアと広い荷室を備える。MGやアルファ・ロメオより、スタイリングの磨き込みは優れている。素材や造形など、インテリアの上質さも際立つ部分だろう。

加えて、A290へ投じられた技術力と洗練度の高さは、印象的なもの。油圧ブッシュ付きの独立懸架式サスペンションは、専用開発されている。市街地ではやや硬めの乗り心地ながら、流れの速い郊外の公道では、落ち着きのある姿勢制御を叶えている。

ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ
ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ヘアピンカーブを回っても、路面の起伏を越えても、常にしなやかな流暢さが保たれる。運転する特別感を、巧みに醸し出している。

クーパー SEとは異なり、走り出しから活発ということはない。どちらかといえば大人な雰囲気で、ドライバーへ自信を与えてくれるような味わいが強い。それでも、その気になれば出色の敏捷性でちゃんと応えてくれる。

コンパクトなボディも、走りの楽しさを生む大きな要因の1つだろう。明確なフィードバックが伝わるステアリングや、前輪駆動らしい積極的な操縦性のバランスも、しっかり魅力を底上げしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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