スタミナ以外の魅力沢山 シトロエンe-ベルランゴへ試乗 広大な車内に過不足ない動力性能

公開 : 2025.03.17 19:05

ファミリーカーに過不足ない動力性能と操縦性

ステアリングホイールを握ってみれば、運転のしやすさで笑顔になる。フロントアクスルを回す駆動用モーターは、135psに26.3kg-mと控えめだが、市街地を軽快に駆け巡るのには充分。高速道路への合流では、少し気張る必要はあるけれど。

0-100km/h加速は11.5秒。高速道路の巡航でも、走行車線の速度なら維持しやすい。ファミリーカーとしての要求を過不足なくこなす、動力性能といえる。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

アクセルオフでの回生ブレーキの強さは、ステアリングホイール裏側のパドルで調整できるのがうれしい。最も強くすると、期待以上にしっかりした減速を引き出せる。ブレーキペダルの感触は、ややスポンジーではある。

サスペンションは基本的にソフト志向。市街地の速度域では、路面の凹凸をなだめてくれ、快適性は高い。しかし速度域の高い郊外の道では、不整を通過するとボディが揺れ気味。高速道路では、落ち着きに若干の陰りが生じ、風切り音が少し目立っていた。

ステアリングは切り始めでやや曖昧ながら、入り組んだ路地でも扱いやすい。背の高いMPVだから、カーブではボディロールを伴うものの、直進性も優れている。

ドライバーとの一体感を求めるタイプではないとはいえ、ギリギリまで攻め込まない限り、乗り心地と操縦性とのバランスは良好。穏やかな走りの特性が、e-ベルランゴには似合っている。シトロエンらしくもあるだろう。

強みは沢山 限定的な航続距離が足かせ

今回の試乗で得た電費は、平均4.5km/kWh。航続距離は、240kmを少し超える程度だった。気温の低い真冬とはいえ、カタログ値との開きは小さくない。気温が上昇すれば30km程は伸びると予想できるが、遠くを目指す場合は計画的な充電が不可欠だ。

運転支援システムは、EUのGSR2へ準拠。最高速度の警告機能は、タッチモニター横のボタンで簡単にオフにできる。

シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)

e-ベルランゴの英国価格は、ベーシックなプラス・グレードで3万1135ポンド(約607万円)から。兄弟モデルでインテリアの上質感が勝る、プジョーe-リフターよりお手頃に設定されている。

広大なボディが生む実用性が何より魅力の、e-ベルランゴ。しかし、限定的な航続距離が、ファミリー・ムーバーとしての能力の足かせになっている。再導入が決まった、ディーゼルエンジン仕様のベルランゴを、検討したくなる気持ちは理解できる。

日常的にさほど遠くまで走らないなら、魅力的なMPVであることは間違いない。シンプルで飾らないスタイリングやインテリア、市街地で快適な乗り心地、取り回しのしやすさ、比較的お手頃な価格など、スタミナ以外の強みは沢山ある。

◯:実用性の高い広大な車内空間 全般的に快適な乗り心地 兄弟モデルよりお手頃
△:航続距離が短い 質素な内装 ダイナミックな走りは得られない

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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