砂埃1つないエンジンルーム フォード・カプリ II(2) 「記憶より凄く古い感じがする」

公開 : 2025.03.23 17:46

11歳でひと目惚れしたカプリ II 幼馴染との出会いで念願の1台へ接近 ジェリービーンズのように輝いて見えた再会 新車級のオリジナル状態へレストアされた1台を、英編集部がご紹介

新車のように砂埃1つないエンジンルーム

この取材当日、作業を終えたばかりのフォード・カプリ II 2.0Sは、印象的なほど鮮やかに見えた。人工着色料がたっぷり使われた、1970年代の駄菓子のように、艷やかに陽光で輝いていた。

ブラックアウトされたウインドウフレームと、ブラックビニール・ルーフとのコントラストが、強い心象を生む。オーナーのジョン・コリンズ氏は、フロントフェンダーへ「S」のステッカーを貼ったばかりだという。

フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)
フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

レストアへ着手後、彼が本格的にステアリングホイールを握るのは、なんと今日が初めてだとか。実に14年ぶり。まだ、最終的な仕上げをしている途中なのだそうだ。

インテリアやエンジンルーム、ボディの下回りまで、新車のように砂埃1つない。コリンズが11歳だった1978年当時の姿も、この通りだったはず。ボンネットが長く、実際のボディサイズ以上に大きく見える。

かつての英国では、カプリ Iとカプリ IIIの人気が高かった反面、カプリ IIはその影に隠れるような扱いだった。結果として、望ましいオリジナル状態にある例は極めて珍しい。比較的地味なグレードといえた、2.0Sの場合は特に。

ドアを開くと、内装も完璧に仕立てられている。フェイスリフト版といえた、カプリ III仕様へ改造された例は多い。一部のトリムはオリジナルと異なるものの、ほぼ、ラインオフした時の見た目が保たれている。

起伏で落ち着かないリジッドアクスル

車内空間は、ボディの見た目より狭め。ダッシュボードが、驚くほど高い位置に据えられている。上級グレードと異なり、コリンズの2.0Sでは、インテリアはブラック基調。ドアパネルは、クロームメッキされた僅かなプラスティック製トリムで飾られている。

シートのクロスは、グレーのストライプ。「記憶より凄く古い感じがするなぁ」。10分ほど走らせたコリンズが、笑顔で降りてくる。「カプリの走りって、こんなに悪かったんですかね。忘れてました」。と話す彼だが、14年ぶりの体験に笑顔を抑えきれない。

フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)
フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

カプリ IIのベースは、同時代のフォード・コルチナ。1970年代後半のモデルではあったが、実際の印象はそこまで新しくはなかった。グレートブリテン島郊外の起伏で、ボディは大きく沈み込む。

独立懸架式のサスペンションが普及しつつある中で、リア側はリーフスプリングにリジッドアクスル。さほど大きくない凹凸でもリアタイヤは落ち着かず、左右で掛かる負荷が違うと、安定性もおぼつかなくなる。

ステアリングは、パワーアシストなし。スポーツカーと呼ぶにはレシオがスローで、切り始めは遊びも小さくない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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