砂埃1つないエンジンルーム フォード・カプリ II(2) 「記憶より凄く古い感じがする」

公開 : 2025.03.23 17:46

気筒休止機能の効いたV8エンジンのよう

しかし、カプリ IIは親しみやすい。英国フォードのモデルらしく、普段使いしやすい。クラッチペダルは軽く踏め、シフトレバーもギアを選びやすい。アクセルペダルの反応が小気味いい。大きなリアハッチを得て、実用性もカプリ Iから高められている。

ステアリングホイールの感触と相まって、しっとりした味わいがある。高速域でも不安感は小さく、車線の中央を容易に保ち続けられる。乗り心地以上に、当時のフォードの技術者が配慮した特性といえる。

フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)
フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

2.0L 4気筒エンジンは、スチールブロック。その頃のハイテクユニットではなかったが、最高出力は101psあり、1030kgのクーペボディを勢いよく推し進める。3.0L V6のエセックス・エンジンほど速くはないとしても、同時期のファミリーサルーンには勝る。

アイドリングはやや荒っぽい。気筒休止機能の効いたV8エンジンのような脈動があり、長いボンネットが想起させる、視覚的なイメージと一致する。15.5kg-mと充分なトルクで、積極的にスピードを乗せていける。

おおらかな操縦性といえるが、アメリカのフォード・マスタングと同様に、ヨーロッパのポニーカーも部品の合計以上の完成度へ達している。カプリ IIは、幅広いドライバーを満足させられるように思う。今でも、ちゃんと走りを楽しめる。

「状態を残すため最高のまま売却するでしょう」

既に完璧な状態に見えるカプリ IIだが、コリンズはリアアクスルを再塗装したいと考えている。「家族の一員です。自分の結婚生活より、長く時間をともにしてきたクルマですから」。ところが、将来のことは決まっていない。

「わたしの子どもたちは、ジェイドへ殆ど興味を示さないんですよね。この状態を残すために、最高のまま売却するでしょう。現状へ辿り着けたことには、本当にうれしく感じています」

フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)
フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

少し意外な発言に思えたが、カプリ IIを深く愛することの現れだろう。本当に望んでいる人のもとへ渡った方が、クルマにとってもより良い時間を過ごすことになるのだから。

フォード・カプリ II 2.0S(1974〜1978年/英国仕様)のスペック

英国価格:2117ポンド(新車時)/6000ポンド(約117万円/現在)以下
生産数:56万8357台
全長:4439mm
全幅:1698mm
全高:1323mm
最高速度:170km/h
0-97km/h加速:10.4秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1030kg
パワートレイン:直列4気筒1993cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:101ps/5200rpm
最大トルク:15.5kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォード・カプリ IIの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×