Cd値0.2の超空力ボディ ルーシッド・エアへ試乗 北米の新ブランド 均質化と一線画す革新性

公開 : 2025.03.24 19:05

北米で誕生した新ブランド、ルーシッド 不要なものを省き最小限に抑えCd値は0.2 上質な内装はテスラとBMWの中間 洗練されたドライブトレイン 少し過剰な819ps 英編集部が評価

ボディサイズはBMW i5と同等 Cd値は0.2

都心の渋滞にハマっても、ルーシッド・エアなら退屈しない。そびえる高層ビル群を、巨大なガラスルーフを通じて観察できるから。

北米で誕生したバッテリーEVの新ブランド、ルーシッドは、先輩に当たるテスラ以上のプレミアム・ブランドを目指している。メルセデス・ベンツベントレーに並ぶポジションを狙っている。

ルーシッド・エア・ドリーム・グランドツーリング(欧州仕様)
ルーシッド・エア・ドリーム・グランドツーリング(欧州仕様)

同社はバッテリーやモーターなど、電動パワートレインのサプライヤーとして、2007年に創業。自動車メーカーへステップアップし、最初の量産車となるのが、アルミニウム製ボディをまとうサルーン、エアだ。

フロア部分に駆動用バッテリーが敷かれた、プラットフォームは自社開発。トランスミッションやインバーターなどを内蔵する小さな駆動用モーターに、112kWhと大容量の駆動用バッテリーも同様。航続距離は、アメリカのEPA値で830kmがうたわれる。

試乗したエア・グランドツーリングでは、前後に1基づつモーターが載り、総合での最高出力は819ps。車重は2360kgあるが、0-100km/h加速を3.0秒で処理する。もし不満なら、1050psへ強化した仕様も選べる。

ボディサイズは、全長が4975mm、全幅が1939mmで、BMW i5より僅かに短く広い。スタイリングは宇宙船のようで、大胆なライン処理はなく、派手さも抑えられている。洗練され、筆者はカッコいいと思う。

不要なものを省き最小限に抑えることへ、ルーシッドは注力したという。ヘッドライトの高さは、27mmだけ。全高も1410mmと、同クラスでは低い方に入る。空気抵抗を示すCd値は、0.2しかない。

上質な雰囲気の内装 テスラとBMWの中間

スタイリングと同様に、インテリアも無駄が排除された上質な雰囲気。ナッパレザーにアルパカウール、アルカンターラ、カーボンオークなど、素材には相当こだわられている。職人技を感じさせる高水準にあり、テスラとBMWの中間といった印象だろう。

前席と後席で、異なるカラーコーディネートを指定できるのは面白い。運転席側はダークな色調でスポーティに、その後ろはライトな色調でラグジュアリーに、試乗車は仕立てられていた。見事なデザインだといえる。

ルーシッド・エア・ドリーム・グランドツーリング(欧州仕様)
ルーシッド・エア・ドリーム・グランドツーリング(欧州仕様)

ただし、サンバイザーは後付けアイテムのよう。ちょっとチープに見えていた。断熱性に制限がある大面積のガラスルーフは、エアコンの効きに影響が出そうだ。

ダッシュボード上には、メーター用とインフォテインメント用が一体の、湾曲した32.0インチのモニターパネルが浮いている。5Kの解像度を誇り、表示は極めて高精細。中央側にも、タブレットサイズのタッチモニターが据えられる。

ソフトウエアの反応は素早く、エアコンには実際に押せるハードスイッチも与えられている。アップル・カープレイの接続は、少し安定しなかった。

後席側の空間は広大。メルセデス・ベンツSクラス級にゆとりがある。キャビンフォワードのプロポーションが、効果的に活かされている。リア側のトランクは、2m以上あるサーフボードが入るほどの大容量。フロント側にも、小さな収納空間が設けられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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