ボルボ、ステーションワゴン廃止を検討 「リソースの限界」 主力はSUVへ

公開 : 2025.03.07 18:25

ボルボは将来的にステーションワゴンのない製品ラインナップを検討している。SUVを中心とし、個々のモデルの幅を広げることでV60やV90が担っていた役割を引き継ぐ方針だ。ジム・ローワンCEOが語った。

V60V90の役割はSUVへ

ボルボは将来的に、ラインナップから従来のステーションワゴンを外すことを検討している。

セダンがES90のようなハッチバックに進化したことや、SUVの人気が上昇していることから、ボルボは従来のV60やV90の購入層のニーズにも十分対応できると考えている。

「例えばV90ではなく、XC60を少し違った方法で位置づけた方が良いのではないか?」とジム・ローワンCEOは述べた。
「例えばV90ではなく、XC60を少し違った方法で位置づけた方が良いのではないか?」とジム・ローワンCEOは述べた。

ボルボは近年、XC60やXC90といったSUVモデルで成功を収めており、3月5日に発表した新型ES90も、従来型のセダンよりも背が高く車内空間が広いハッチバックとした。

ES90は名目上はセダンだが、全高が高めで、最低地上高も大きい。ルーフラインは空力特性を考慮した流線型だ。また、ワゴンモデルのような40:20:40分割可倒式の後部座席を備えている。

ボルボにステーションワゴンのない未来はあるかという記者の質問に対して、CEOのジム・ローワン氏は、「ええ、状況は変化したと思う。SUVは車高とともに変化した」と答えた。

「時間をかけて変化したことの1つは、ボルボ車を購入する意思決定者に女性が多いことだ。彼女たちは高い車高を好む」

「そして、当社のセダン、ES90では、車高を低くするのではなく、高くしているのがお分かりいただけるだろう」

「EVには非常に広いスペースがある。エンジンがないので、キャビンを前方に押し出し、トランクスペースを広く確保できる」

ローワン氏が掲げるボルボの長期戦略では、8年サイクルで8車種のボルボモデルを発売し、それぞれ製品ライフサイクルの半ばで大幅なアップデートを実施する予定だ。しかし、ここにはステーションワゴンモデルを追加する余地はほとんど残されてない。

実際のところ、ローワン氏は、7車種に絞った戦略に変更する可能性があると述べており、そうなるとニッチモデルの余地はさらに少なくなる。

今後のEVラインナップとして、EX30、EC40、EX40、EX60(2026年に登場予定)、ES90、EX90の各モデル、そして中国専売のEM90を揃え、ボルボは世界全体で7車種体制となる。唯一の可能性は、比較的ワゴンに近いボディを採用できそうなES60である。

ニッチを開拓できない理由についてローワン氏は、「異なるモデルを市場に投入するにはコストがかかり、それらを維持するにもコストがかかる。マーケティングの観点から見ると、そのようなモデルを投入するのは高価だ」と述べた。

代わりに、ボルボは既存モデルの幅を広げようとしている。例えば、これまでV90が担っていた役割をXC60が受け継ぐように、個々のモデルの役割を拡大していくという。

「例えば、V90を導入するよりも、そのクルマ(XC60)を少し違った方法で位置づけた方が良いのではないだろうか? ブラック・エディションやクロスカントリー・エディションなどがあるが、当社は同じベース車に異なるエディションを展開しているのだ」

「同じプラットフォーム、同じフォームファクターでより多くの台数を販売する方が、はるかに安価で、はるかに費用対効果が高い」

「当社は限られたリソースを持つ比較的小規模な企業だ。どこで勝負をかけ、どこで差別化を図るかについて、非常に意識的に選択を行っている」

欧州の関税の影響について尋ねられたローワン氏は、「かなり複雑になっている」と述べた。

「幸運なことに、当社は欧州、北米、中国に製造施設を持っているため、柔軟性がある」

ボルボは中国製EVに対する欧州の関税に対応するため、EX30の製造を中国からベルギーのゲント工場に移行している。

英国向けの右ハンドル仕様のEX30は中国から輸入されるが、将来的には切り替えられる予定だ。

ES90は、当初は中国・成都にあるボルボの工場で製造される予定だが、「販売できる市場の数は減る」とローワン氏は述べた。現状、欧州では30%、米国では112.5%の関税が課されることになる。

ただ、米サウスカロライナ州のチャールストン工場には「生産能力がある」ため、米国向けのES90の製造をそこで行うという選択肢もある。

記事に関わった人々

  • マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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