フォルクスワーゲン新型EV「ID.Every1」初公開 約320万円で2027年発売へ Up!の精神的後継車

公開 : 2025.03.07 06:45

フォルクスワーゲンは新型EVコンセプト「ID.Every1」を公開した。入門モデルとなるAセグメントの小型ハッチバックで、約2万ユーロ(約320万円)での発売を目指す。

VWの新たな入門モデル

フォルクスワーゲンは3月5日、新型コンセプトカー「ID.Every1(IDエブリワン)」を公開した。2027年までに「手頃な価格」で発売するとしている。

量産バージョンはID.1(仮称)と命名される見込みで、「欧州発、欧州向け」のモデルと表現されている。Aセグメントの小型車であるUp!の精神的な後継車であり、フォルクスワーゲンのEVラインナップにおける入門モデルとなる。

ID.Every1は最高出力95psのモーターを搭載し、最高速度は130km/hに達する。
ID.Every1は最高出力95psのモーターを搭載し、最高速度は130km/hに達する。    AUTOCAR

フォルクスワーゲンのブランドCEOであるトーマス・シェーファー氏は、このモデルをEVラインナップにおける「パズルの最後のピース」と表現し、「世界が待ち望んでいたクルマだ」と付け加えた。

ID.Every1の量産バージョンでは、前輪駆動のMEBエントリー・プラットフォームを採用する。このプラットフォームは、今後発売予定のID.2、ID.2X、そしてグループ傘下の兄弟ブランドから発売されるクプラ・ラヴァル、スコダ・エピックの4車種向けに開発されたものだ。これら4車種はスペインにあるセアトのマルトレル工場で製造されるが、ID.Every1の工場についてはまだ発表されていない。

フォルクスワーゲンの開発責任者であるカイ・グリュニッツ氏は、前輪からAピラーまでのフロントエンドはID.2allコンセプトとほぼ同じだが、搭載するバッテリーは小さく、ホイールベースも短いと述べた。また、リアアクスルは現行のポロで使用されているものをベースとした機構である。

ID.Every1では、最高出力95ps、最高速度130km/hを誇る新開発の電気モーターが搭載されている。バッテリーの容量や正極材については未公表だが、航続距離は「少なくとも」250kmに達すると言われている。

また、フォルクスワーゲン・グループとして初めて、米国のEV新興企業リビアンと共同開発した新しいソフトウェア・アーキテクチャーを採用する。

2027年発売時の価格は約2万ユーロ(約320万円)を目標としている。欧州最安価とはならないが、ダチア・スプリング(約290万円)やリープモーターT03(約300万円)などと同じ低価格帯に位置する。

デザインとスタイリング

ID.Every1コンセプトは、量産バージョンの外観をほぼ正確に反映しているものと思われる。まず、かつてのUp!を彷彿とさせる、直立したプロポーションが特徴的だ。デザイン責任者のアンドレアス・ミント氏は、「人々が共感できる個性とアイデンティティを備えたクルマ」を作ることが目標だったと語っている。

大型のLEDヘッドライトと丸みを帯びたフロントエンドは、親しみやすく、好感を持てるようにすることを意図したものだという。フロントとリアのエンブレムはイルミネーション付きだ。

フォルクスワーゲンは航続距離を「少なくとも」250kmとしている。
フォルクスワーゲンは航続距離を「少なくとも」250kmとしている。    AUTOCAR

このコンセプトでは彫刻的なホイールアーチと19インチのホイールを備えているが、多くのEVで見られるように、アクスルは車両の最端部に寄せられ、車内空間を最大限に広げている。ミント氏によると、比較的シンプルなシルエットとサイドボディワークは、「タイムレス」で「クラスレス」なデザインを目指したものだという。

全体的に、フォルクスワーゲンの伝統を思わせるデザイン要素がいくつも取り入れられている。特に、リアのCピラーは初代ゴルフを彷彿とさせるデザインとなっている。

ミント氏は、自身がデザインするフォルクスワーゲンのモデルすべてに、個性を与える「隠し味」のような要素を取り入れたいと語っている。ID.Every1の場合、スポーツカーから着想を得たルーフ中央部分の低い点がこれに該当するという。その他の「隠し味」としては、ルーフのくぼみに組み込まれたハイマウントストップランプや、新デザインの19インチホイールなどが挙げられる。

ID.Every1の全長は3880mmで、これはUp!(3600mm)とポロ(4074mm)の中間となる。なお、ID.Every1の上に位置するID.2allコンセプトの全長は4050mmである。

フォルクスワーゲンの説明では、ID.Every1は4人乗りで、305Lのトランクを備えるという。これは、Up!の251Lから大幅な増加である。

インテリアはシンプルな造形だ。ダッシュボード中央にタッチスクリーンが搭載されているが、その下にはエアコンやオーディオ操作用の物理ボタンがある。

ステアリングホイールは角張った2スポークタイプである。一方、助手席側にはタブレットや棚など、さまざまなアイテムを取り付けられる可変式の多目的パネルが設置されている。運転席と助手席の間には取り外し可能なBluetoothスピーカーがある。センターコンソールはID.Buzzと同様のものが採用されており、前後にスライドさせることができる。また、引き出し式の棚も備えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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