フェラーリF40へ迫る速さ TVRサーブラウ UK版中古車ガイド(1) 一度見たら忘れない容姿

公開 : 2025.03.30 17:45

独自V8エンジンでスーパーカー級に速い、2+2ボディのサーブラウ エッジの効いたサウンドとスピード パワフルなFRを電子アシストなしで運転する興奮 英編集部が長短を振り返る

フェラーリF40マクラーレンF1に迫る速さ

プロトタイプが発表されたのは、1994年。TVRサーブラウの速さに、AUTOCARは度肝を抜かれた。これ以上速く走るには、フェラーリF40かマクラーレンF1が必要だと、書き残されたほど。

1981年に経営を継いだピーター・ウィーラー氏は、グリフィスとキミーラでTVRの立て直しに成功。ドライバーが結婚し、人生が次のステージへ進んでも他メーカーへ流れないよう、2+2のモデルも必要だと考えた。

TVRサーブラウ(1996〜2006年/英国仕様)
TVRサーブラウ(1996〜2006年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

かくして、サーブラウにはベビーシートも設定。ウィーラーが目指した役割を、しっかり果たしている。

反面、1994年にBMWはローバーを買収。グリフィスやキミーラへ載っていた、ローバー由来のV型8気筒エンジンは入手が難しくなってしまう。そこで彼は、独自のユニットを開発するという、思い切った決断を下した。

設計を担当したのは、技術者のアル・メリング氏とジョン・レイヴンズクロフト氏。フラットプレーンクランクを採用した、AJP8ユニットが生み出される。

開発時のテストでは、自社のレーシングカーへ搭載。乾燥重量が121kgと小型・軽量でありつつ、大パワーを発揮することが確かめられた。その結果、サーブラウはスーパーカー級の動力性能を得ることになった。

TVRの技術者を、このV8エンジンは魅了した。レーシング・ユニットといえる設計で問題もはらんでいたが、その特別さで、多くのオーナーを獲得するに至った。初期型の4.2Lの最高出力は、360psが主張された。

パワフルなFRモデルを、電子アシストなしで運転

一度見たら忘れないスタイリングを手掛けたのは、ダミアン・マクタガート氏。アグレッシブすぎず、現在でも新鮮さは薄れていない。

インテリアをデザインしたのは、ニック・コフラン氏。大胆・複雑な造形なだけでなく、レザーがくまなく張り巡らされ、実用性も無視されていない。ステアリングホイールの下部に補機メーターが並ぶ、型破りなレイアウトも特徴だろう。

TVRサーブラウ(1996〜2006年/英国仕様)
TVRサーブラウ(1996〜2006年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

当時のF1風ステアリングホイールには、クラクションだけでなく、ワイパーやライト類のスイッチを配置。助手席は大きく前方へスライドでき、リアシート側の空間を広く確保できる。

パワフルなFRモデルを、電子アシストなしで運転したいというドライバーがターゲットで、サーブラウにはABSやトラクション・コントロールが未実装。そのかわり、ストロークが長く精緻なアクセルペダルで、正確にパワーを引き出せる。

ステアリングレシオは、ロックトゥロック2回転とクイック。1999年に追加された4.0L直列6気筒「スピードシックス」仕様では、2.4回転へ僅かに落とされた。

この直6エンジンは、4.2L V8へ迫る355psを発揮しつつ、最大トルクは僅かに上回った。スペック上の違いは小さかったものの、高い柔軟性でより速く運転しやすい。

サーキット前提のV12エンジン仕様も登場し、その公道用モデルも提供されている。7.7L V12の最高出力は900ps以上で、0-100km/h加速は2.9秒。最高速度は386km/hへ届いたが、ウィーラーは速すぎると判断し、1台限りで終了している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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