キャデラックCTS 第1回

公開 : 2015.02.24 12:54  更新 : 2017.05.22 13:55

今回1週間ほどキャデラックCTSをレポートできることになった。21世紀に入ってからデビューしたCTSシリーズだが、現行のモデルは2013年にフルモデルチェンジされた3代目となる。以前のモデルはキャデラックとしてはコンパクトなイメージのプレミアムDからEセグメント・サイズのボディに自然吸気のV8やV6のパワーユニットを搭載していたが、現行モデルは時流に則ってダウンサイジングが敢行され、現在は直列4気筒、2ℓ直噴ターボのみに絞られている。

現行キャデラックのラインナップ全体を俯瞰してみると、CTSよりもひと回り小さいプレミアムDセグメントにセダンとクーペを介するATSがおり、それ以外にSUVタイプのSRXクロスオーバーやSRXブリリアントスポーツ、そしてエスカレードが揃う。だが核となるのはやはりCTSということになるだろう。
現在我が国に導入されているキャデラックCTSのグレードは2車種、CTSラグジュアリーとCTSプレミアムである。両者の最大の違いは駆動方式で、ラグジュアリーが後輪駆動であるのに対し、プレミアムは全輪駆動となる。今回レポートできることになったモデルは全輪駆動のCTSプレミアムで、現在の季節を鑑みて、足元には予めミシュランのスタッドレス・タイヤが装着されている。

4気筒ターボ・ユニットのパワーをパドルシフトでキレイに操り、4駆にスタッドレスを履いてあらゆる道を走破する。一昔前のキャデラックでは考えられなかったイメージに違いないのだが、時代は確実に変わってきているのだ。サイズ感やクオリティを考えれば、CTSがライバルとしてロックオンしているのはずばりドイツ製Eセグメントということになる。

2月6日
都内でキャデラックCTSを借り出し、高速道路で自宅まで50kmほどの距離を帰る。ボディはブラックダイヤモンドトゥリトコートと呼ばれるメタリックブラックで、本革の内装も黒系のジェットブラックなので、キャデラックらしいかなりシックな雰囲気が漂う。

走りはじめの印象は遮音がしっかりとしていて室内が非常に静か、あとスタッドレス・タイヤを履いているという事実を差し引いても驚くほど乗り心地がいいことだった。ゆったりと走っているときのふかふかとした乗り心地の良さは、典型的な“キャディ”を髣髴とさせるのだが、いざ高速道路の降り口のカーブ等で少しハイペースなコーナリングを試みてみても、ほとんどロールを許容せず、こともなげにやり過ごしてしまう。

乗り心地がいいのにロールしない。こんなことがあるのだろうか? と狐につままれたような気分でいたのだが、後で説明書を読んで謎が解けた。CTSのショックアブソーバーにはマグネティックライドコントロールが標準で奢られていたのである。磁性流体減衰力制御システム、いわゆる可変ダンパーの一種であるこの装置は路面の状況を絶えずセンシングし、1000分の1秒単位でダンパーの減衰を可変させるというもの。このダンパーシステムはこれまでヨーロッパ車では体験していたが、ここまではっきり “すごい!” と感じたことはなかった。このアシ捌きの良さは、ダンパーだけでなく、シャシーの基本的な仕上がりが大きく貢献しているに違いない。

次回のレポートではスタッドレス・タイヤを履いたCTSプレミアムの機構的な要ともいえる全輪駆動システムを試すべく、雪山まで走っていこうと考えている。キャデラックと雪という異色とも言える組み合わせがどのような走りを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

text:吉田拓生 / モーター・ジャーナリスト photo:高橋学

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