ブレーキ・バイ・ワイヤ技術の普及が「ノンストップ」な理由 ボッシュ、新機構を提案

公開 : 2025.03.13 18:45

ブレーキペダルとブレーキ装置を機械的に切り離し、電気信号で操作する「バイ・ワイヤ技術」の注目度が高まっています。その仕組みと利点、そしてボッシュやコンチネンタルといったメーカーの最新システムについて紹介します。

新世代のブレーキ 「冗長化」で安全性を確保

ボッシュは最近、さまざまな気候条件下で公道を3200km以上走るテスト走行を実施し、今秋にブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを市場投入する準備を整えた。

すでにさまざまな自動車メーカーから注文が来ており、ボッシュは2030年までに世界で550万台の車両にブレーキ・バイ・ワイヤが搭載されると見込んでいる。

ボッシュの油圧ブレーキ・バイ・ワイヤ
ボッシュの油圧ブレーキ・バイ・ワイヤ    ボッシュ

いわゆる「ドライブ・バイ・ワイヤ」は一見奇抜なコンセプトのように思えるが、その本質は、クルマのステアリングやブレーキの操作機構から油圧システムを取り除くことにある。

代わりに、ステアリングホイールやブレーキペダルを通してドライバーが入力した情報は、電子信号としてコンピューターに送られ、コンピューターからアクチュエーター経由でブレーキやステアリングを作動する。

完全なブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを導入すると、ドライバーとブレーキが切り離されるだけでなく、油圧機構を電気式ブレーキキャリパーに置き換えた「ドライブレーキ(液体を使わないブレーキ機構)」に切り替わる。

ボッシュのシステムは、ドライバーとシステムを機械的に切り離し、代わりに電子信号を送信するが、ブレーキキャリパーは依然として油圧で動作する。

従来のブレーキシステムでは、ブレーキペダルがマスター油圧シリンダーに直接作用する。通常、このシリンダーはエンジンルーム内の運転席前方のバルクヘッドに取り付けられている。

しかし、ボッシュの製品では、ブレーキ関連のコンポーネントをバルクヘッドに装着する必要がない。NVH(騒音・振動・乗り心地)、衝突安全性、製造のしやすさの観点から最適な場所に装着することができる。

ブレーキペダルから油圧ブレーキ・バイ・ワイヤとESPアクチュエーターに信号が送られ、油圧を上昇させて四輪すべてにブレーキをかける。

それぞれが独立の電気チャネルに接続されているため、1か所に何らかの問題が生じても、残りの部分で機能を維持することができる。このように余裕を持たせることを「冗長性」と呼び、電子制御の安全関連システムすべてに備わっている。

信頼性の高いブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの完成がますます急務となっている背景には、自動運転機能の普及や、実現に近づきつつある完全自動運転車の存在がある。

コンチネンタルは2016年に同様の技術である『MK C1』を発表し、2018年にはアルファ・ロメオジュリアとステルヴィオに採用された。2022年には『MK C2』へと進化し、マスターシリンダー、ブレーキブースター、制御システム(ABSとESC)を単一のコンパクトなユニットに統合した「ワンボックス・ソリューション」とされている。

ブレーキペダルは油圧系統から切り離され、ペダルフィール(踏みごたえ、感触)シミュレーターを使うことで「ドライバーに馴染みのあるブレーキ操作体験を提供する」ようになっている。

コンチネンタルは、EVの回生ブレーキ使用時、または従来の摩擦ブレーキと回生ブレーキを併用する際に、ペダルの踏みごたえが変わらないことがドライバーにとっての利点の1つであると述べている。

ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムはエネルギー消費効率の改善にも役立つはずだ。コンチネンタルによると、同社のシステムではブレーキ使用後もブレーキキャリパー内に圧力が残らないため、WLTPテストではCO2排出量を5g/km削減できるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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