ロンドン・クラシックカー・ショー
2015.01.08〜15
クラシックカー・ショーのカレンダーに新たなイベントが加わった。会場に選ばれたのはロンドン中心部、ドックランズにあるエクセル展示センター。都心部からのアクセスに優れ、ロンドン・シティ空港にも隣接しているため、国内外からやって来るギャラリーにとって便利なロケーションといえよう。
1月8日にはショーの開幕を告げるVIP向けプレビュー・ナイトが開催され、デイビット・クルサード、マーティン・ブランドル、レッドブル代表のクリスチャン・ホーナー、エイドリアン・ニューエイといったモータースポーツ界の著名人が参加してインタビューや討論会が行われた。MCを務めたのは、熱心なクラシックカー・マニアでもあるBBCラジオ2のキャスター、クリス・エヴァンス。ほかにもトップ・ギアのプレゼンターであるジェームス・メイが人気シェフのジェームズ・マーティンと共に登場し、 “クラシック・カフェ” と名付けられたイベントでマーティン・シェフのミニ・コレクションが展示された。
会場になった横長のホールは、グランド・アヴェニューという通りが左右に横切っており、デモンストレーション・ランに参加する車両がその通り沿いに展示された。通りの手前は、グランド・アヴェニュー・クラブの展示車が取り囲むメインステージ。ホールの四隅では、「モータースポーツ・マガジン・ホール・オブ・フェイム」、「ル・マン・アイコンズ」、「エイドリアン・ニューエイのマシン」、「ジェームス・メイが選ぶ世界を変えたクルマ達」といったテーマで展示が行われた。また、グランド・アヴェニューの両端はクラシックカー・クラブやメーカーによる展示エリアとされ、アストン・マーティン、シトロエン、マセラティのメーカー・ブースでは、歴史的な車両と現行モデルが展示されていた。
このイベントのデモンストレーション・ランは、クラシックカー・ショーに新たな息吹を吹き込んだといえよう。一般的にこうしたショーは車両を動かさない展示形式をとり、今回のような屋内施設では、なおさら走行イベントを開催するのが困難である。しかしこのアプローチによりエンスージアストたちは、展示車両が動く姿を目にし、炸裂するエンジン音やガスの匂いを肌で感じることができた。集まった車両は多種多様で、年式にして90年もの期間に渡り、古くは世界初の大量生産モデルである1903年式のオールズモビル・カーブド・ダッシュ(1901年から1907年までに約1万9000台が生産)にまでさかのぼる。ほかにも、唯一の現存車両と考えられるモーリス8の軍用無線車、ブガッティ・タイプ35B、ジャガーCタイプといった伝説的レーシングカー、マセラティ250F、マクラーレンM23、JPS ロータス87といったF1マシンが並び、さらにフェラーリ250GTカリフォルニア・スパイダー、ACコブラ、ランボルギーニ・ミウラといったロードカーも展示された。
ル・マン・アイコンズには、フェラーリ512S、フォードGT40、ジャガーXJR9、ポルシェ956、マクラーレンF1GTR、ベントレー・スピード・エイトといった戦後を代表する素晴らしいスポーツ・レーシングカーが揃い踏みした。モータースポーツ・レジェンドでは、アルファ・ロメオ・ティーポB、フェラーリ500F2、BRM V16、ヴァンウォール、ロータス25、ティレル006、ロータス97T、ベネトンB193などを展示。それらはタツィオ・ヌヴォラーリ、エンツォ・フェラーリ、ファン・マニュエル・ファンジオ、スターリング・モス、ジム・クラーク、ジャッキー・スチュワート、アイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハーにゆかりのあるマシンで、モータースポーツ界へ祝意を表す展示となった。
また、史上最も成功したF1マシン・デザイナーとして誰もが認めるエイドリアン・ニューエイは、彼の手で設計したマシンや彼自身のコレクションを展示。12歳のころ、父親が購入したキット販売(購買税が免除になる)のロータス・エランの組み立てを手伝ったというエイドリアンには、主催者によるサプライズが待っていた。木曜日のプレビュー・ナイトで彼がメインステージに登壇すると、まさにその実車がグランド・アヴェニューを駆け上がってきたのだ。これはまさに感動的な瞬間であっただろう。
多くのベンダーが様々な展示を行っていたが、そのなかにはわれわれの目を楽しませマシンも並んでいた。とりわけジョー・マカリによる60年代から70年代のフェラーリ展示は、250GTルッソ、275GTS、レストレーション中の330GTC、365GTB4、ディーノ246GTといった豊富な内容であった。彼はショーを盛り上げるためにメイン・エントランスへ、スポーツ・レーシングモデルの500TRCを展示していた。
また、F1で活躍中のウイリアムズは、新設したヘリテージ部門の発表を今回のショーで行い、1981年のFW07C、1993年のFW15C、2003年のFW25といったF1マシンを展示。顧客向けにF1マシンのセールス、メンテナンス、輸送および走行を行うという。
素晴らしいモデルの展示と走行を楽しめるショーという形式は、入場料を払ってやってくるギャラリーを納得させる内容であったようだ。これは、初開催にして主催者予想を上回る2万5000人の来場があったことからも裏付けられる。今回の成功を糧に、2016年にはさらに素晴らしいイベントを計画しているようだ。それでは会場に展示された主なモデルをご覧いただこう。