【サーキットの技術を公道へ】マクラーレンとカーボンファイバーが織りなす40年以上の進化を、名車とともに振り返る
公開 : 2025.03.17 07:05
英国のスポーツカーメーカーであるマクラーレンは、これまで約40年以上の歳月をかけてカーボンファイバーを用いた革新的なエンジニアリングに挑戦してきました。その進化の歴史をマクラーレンの珠玉のロードカーたちとともに振り返りましょう。
もくじ
ーマクラーレンDNAの中核となる技術
ーマクラーレンMP4/1(1981年)
ーマクラーレンF1(1993年)
ーマクラーレン12C(2011年)
ーマクラーレンP1(2013年)
ーマクラーレン720S(2017年)
ーマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンター開設(2018年)
ーマクラーレン・アルトゥーラ(2021年)
ーマクラーレンW1(2024年)
マクラーレンDNAの中核となる技術
マクラーレンは、60年以上にわたってフォーミュラ1で開発された革新技術を牽引してきた。そのため、ライトウエイト・スーパーカー・エンジニアリングのスタンダードとなる画期的なテクノロジーを、自動車産業にもたらす有利な立場にある。
マクラーレンの革新技術を最もよく象徴しているのは、カーボンファイバーだ。軽量、高強度、高剛性を実現する素材科学の中でも高度にテクニカルなこの分野において、マクラーレンは半世紀近くにわたってリーダーであり続け、可能性の限界を絶えず乗り越えてきた。

公道とサーキットの特性を最高の形で組み合わせたスーパーカーを実現する上で、カーボンファイバーは重要な役割を果たしている。マクラーレンのプロダクションカーは、最初のモデルであるマクラーレンF1以来、すべてコンポジット素材で作られたシャシーをベースにしてきた。この素材の軽さと優れた剛性は、最高水準のパフォーマンスと刺激的なダイナミクスの鍵を握るだけでなく、クラストップの乗り心地を実現し、さらに効率性という付加価値ももたらす。
また、その強度は安全性、品質保証、耐久性につながる。スーパーカーのプラットフォームとして完璧な素材であり、優れたパッケージング・ソリューションが可能になるため、デザイナーは驚くべき美しさと空力効率を兼ね備えたモデルを実現できる。
F1におけるヘリテージに深く根ざしたこの技術こそ、マクラーレンDNAの中核なのだ。
マクラーレンMP4/1(1981年)
MP4/1は、総カーボンファイバー製モノコック・シャシーを初めて採用したレーシングカーとして、フォーミュラ1に革命を起こした。その軽量で剛性に優れた構造によって、安全性とパフォーマンスを大きく向上させたのだ。ジョン・バーナードがデザインしたこの先駆的なシャシーをきっかけに、モータースポーツでカーボンファイバーの採用が広がり、F1マシンの設計が根底から覆された。
カーボンファイバー・シャシーを備えたマシンの登場と共に、現代F1の時代が幕を開けたのだ。1981年のイタリアGPでは、安全性におけるカーボンファイバーの優位性が劇的に示された。マクラーレンのドライバーだったジョン・ワトソンが、約225km/hで大事故を起こしながら、自力で脱出し、無傷で生還したのだ。このことは、カーボンファイバー・シャシー技術こそF1の安全性の未来形だと、パドックで広く認められるきっかけとなった。そのわずか3レース後には、カーボンシャシーのポテンシャルもはっきりした。その年のイギリスGPで、ワトソンが40秒以上の大差を付けて優勝したのだ。

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