【現役デザイナーの眼:BMW X3】リフレクションで魅せるデザインで、新たなステージへ

公開 : 2025.03.19 11:45

新型X3は、将来のBMWデザインを占うモデルか

前述の通り、ここ数年のBMWデザインは『洗練さ』が足りないと感じていましたが、もしかしたらそれらは新興国市場を念頭に置いたものかもしれません。 

それまで一般的なユーザーがBMWに期待していたのは、スリークで走りが良さそうなデザインだと思いますが、それが新たな顧客を獲得するために、強さや奇抜さなど迫力重視のデザインに変わったのだと思います。

コンセプトカー『Vision Neue Klasse』。逆スラントしたノーズはBMW的だが、極限までシンプルなデザインに仕立てている。
コンセプトカー『Vision Neue Klasse』。逆スラントしたノーズはBMW的だが、極限までシンプルなデザインに仕立てている。    BMW

この変化は、全高が59mm高くなり、印象がガラリと変わった現行7シリーズ以降、5シリーズ、さらにはX2などで顕著になった印象があります。

しかし今後は原点回帰し、本質を問うデザインに戻るのではないかと思います。例えば2023年に発表されたコンセプトカー『Vision Neue Klasse』では、逆スラントしたノーズで伝統的なBMWを表現しつつ、車体全体としてはこれまでに比べ非常にシンプルで明快なシルエットや面構成で、かつグリルやランプなどグラフィックは必要最小限になっています。伝統あるキドニーグリルとヘッドランプを一体にした顔まわりは議論のあるところかもしれませんが、デザインの方向性を示す明快なメッセージが伝わるデザインです。

新型X3でも、端的にいうとコンセプトカー同様シンプルで明快なデザインになっており、またリフレクションの変化までを意識した造形は、従来のBMWに無いものです。それら点で、新時代のBMWデザインを示唆するものではないかと感じており、3シリーズなど今後出てくる車種に期待しているところです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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