過去25年で進化した空力設計 アウディA2(2003年)買ってみた 英国記者の視点
公開 : 2025.03.20 18:45
AUTOCAR英国編集部のマット・プライヤー記者が中古のアウディA2を購入。現代のクルマとの「空力設計」の違いを実感しつつ、可愛らしいボディラインに惚れているようです。
驚異的だったA2の空気抵抗係数
筆者はアウディA2を購入した。2003年式の1.4Lディーゼル(最高出力75ps)で、車検が切れていたため、500ポンド(約9万5000円)かかった。
これまでに、後輪のベアリングを交換し、隅々まで汚れを落とし、車検に出した。ヘッドライトの調整とパーキングブレーキの効きが悪くて不合格となったが、後者は放置されている時間が長かったせいかもしれない。

この記事が公開される頃には、両方の問題とヘッドライトの曇りに関する注意事項を解決したA2が、総額550ポンド(約10万円)以下で完全に公道走行可能な状態で、きれいに車検を通っていることを願ってやまない。
もちろん、今後もこのA2に関してはもっとお伝えしていきたいと思っている。
しかし、前オーナーが撮影した写真に32km/lという燃費が示されていたのを見て、A2がいかに低燃費か考えさせられた。
アルミニウム構造かつコンパクトなため、A2の車両重量はわずか960kgだ。しかし、スポンジでボディを磨きながら、筆者は過去25年の間に空気力学分野がどれほど進歩したかを再認識した。
A2 TDIの空気抵抗係数(Cd値)は当初0.28だったが、空気抵抗を大幅に低減し、燃費を向上させた特別仕様車では、0.25まで改善された。145セクションのタイヤやアンダーボディの再設計など、さまざまな工夫が施された結果である。
しかし今日では、それほど滑らかな印象を与えないクルマでも、空気抵抗係数が0.20台前半という数値が一般的になりつつある。
一見したところ、A2はかなり効率的な形状に見える。フロントは丸みを帯び、ルーフは涙滴形にアーチを描いている。これは最も空力に優れた形状である。
もし全長が12mあり、ボディに沿って空気の層流を維持する涙滴型になっていれば、どのクルマも非常に低燃費になるだろう。
しかし、実際にはそうではないので、空気は何らかの方法でボディから離さなければならない。そして、できるだけ素早く離す方が望ましい。そのため、多くの現代のクルマには、トランクリッドスポイラーやルーフスポイラーが装備されている。
リアエンドが丸みを帯びていると、空気の渦を発生させ、ボディにまとわりついて抵抗を増やす。自動車デザイナーがリアライトの形状を空力特性を考慮して丹念に造形していることからも、この部分の改善がどれほど重要かがわかる。
特にEVでは、空力特性がエンジン搭載車よりも全体的なエネルギー消費効率に大きな影響を与える。また、抵抗が増えると燃料費だけでなく充電時間も増える。
このあたりは旧式のA2にはない、非常に細かい点である。ドアハンドルは突き出ており、ワイパーはフロントガラスの端よりも上に位置し、(非常に控えめだが)ボディクラッディングもある。
実用性や規制も影響している。A2のハッチには小さなリップスポイラーが取り付けられているが、これはもっと大きくすれば効率が上がるし、またトラックの荷台に付いているようなものを側面に追加してもいいだろう。
しかし、そうすると後方視界が悪くなり、筆者が思うにとても可愛いラインが台無しになってしまう可能性がある。リアライトがボディにマッチするように形作られるのではなく、彫刻的にデザインされた場合も同様だ。効率は上がるが、魅力は減る。
当時アウディがやらなかったことで、今日ではやらざるを得ないようなことがある。特に、A2のように先進的で、非常に高効率なクルマの場合はそうだ。
それでも、1990年代後半のデザインとしては、決して悪くない。計算はしていないが、A2を平地で100km/hで走らせるには、10ps前後の出力で十分かもしれない。
A2の空気抵抗を可能な限り減らすというのは楽しいプロジェクトになるだろう。スポイラーを再設計し、後輪をフェアリングで覆い、ボンネットを延長するなどだ。
もちろん、それらの作業によってEV並みの効率性を得ることはできない。それに、もっと細いタイヤを装着する以外には、いずれも実行するつもりはない。筆者はただ、この小さな驚異をありのままに楽しむつもりだ。
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