オフロード走行に適したEV だがバッテリーの重さは大問題 英国記者の視点

公開 : 2025.03.21 18:45

車輪の動きを細かく制御できるEVはオフロード走行に適しており、ハマーのような重量級SUVでも驚異的な走りを見せます。しかし、重量の問題は解決すべきだと英国編集部のマット・プライヤー記者は言います。

バッテリーはもっと軽量化すべき

最近試乗したEVのメルセデス・ベンツGクラスは興味深いクルマだ。

新型の4WD車に大男4人を乗せると重量オーバーになると言われたら、40年前のスズキSJ410に一生乗っていたい、と答えるだろう。筆者は今でも、スズキの小型車には好感を抱いている。

しかし、電気で動く4WD車というアイデア自体は、決して悪いものではない。オフロードでは、電気モーターや電子機器の反応速度が速いEVの方が、機械駆動のクルマよりも確実にうまく走れるはずだ。

エンジン車で車輪が滑った場合、スリップセンサーが作動し、ブレーキがかかったり、パワーが抑制されたりするまでに時間がかかる。エンジンの回転数が落ちるまでの時間はミリ秒単位だが、電気モーターが車輪を直接駆動する場合は待つ必要がない。

同様に、今すぐにパワーを加えたい場合、さらに言えば、片輪にパワーを加え、1秒後に2輪、次に1輪、次に4輪と切り替えていく場合、電気システムはクルマを動かし続けるという点において、無敵である。

強みは他にもある。わだちから脱出しようとして、クルマが前後に揺れ動いているのを見たことがある人も多いだろう。電気モーターは、これを簡単に行うことができる。

大型のアドベンチャーバイクには、単気筒または2気筒エンジンが搭載されていることが多い。これにはいくつかの理由があるが、1つは、車輪に伝わるパワーパルスである。特に、2つのシリンダーのクランク位置がオフセットされている場合はそうだ。

これがアドベンチャーバイクに特有の、脈動するようなパワー伝達を実現している。そして、泥や砂の中でもバイクを動かし続けるのに役立つ。

実質的には、4気筒のように滑らかに回転してパワーを逃すのではなく、綱引きのチームが息を合わせたように、地面にパワーをぶつける。そして、電気モーターの場合、このように動くよう指示することができる。あるいは、他のどんな動きも。

また、本格的なオフロード走行では、航続距離もあまり気にならない傾向にある。EVは一般的に低速走行時のエネルギー効率が良く、空気抵抗による損失がほとんどないためだ。また、利用可能な電力をすべて使い切ることもまれであり、回生ブレーキを使用するのが一般的だ。

さらに、目的地に到着した際には、高電圧バッテリーをグリル、チェーンソー、シャワーポンプの電源として使用できる。

問題は、バッテリーの重量だ。重量は障害物を乗り越える際の大敵である。

舗装道路では、路面の荒れ具合は一部のクルマの重さよりも交通量の多さに左右される。しかし、緩い地面では重量がモノを言う。

メルセデス・ベンツG580は確かに重いが、それは他の電動4WDも同じだ。テスラ・サイバートラックは約3100kg、フォードF-150ライトニングもほぼ同じ、GMCハマーはなんと4100kgだ。

ここは、プラグインハイブリッド車(例えばジープラングラー4xeなど。ただし、同車の電気モーターは通常のトランスミッションを介して駆動する)に活躍のチャンスがある。

しかし、自動車の世界でバッテリーの軽量化を求める声が最も大きいのは、まさにこのオフロードの分野であろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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