前輪駆動の廉価版も登場 レクサスRZへ試乗 静的・動的な質感は上々 航続距離がネック

公開 : 2025.04.04 19:05

大胆な面構成とシャープなラインを得た、電動のRZ 上位グレードの内装はしっかり豪華 首を痛めそうな加速力 穏やかで滑らかな乗り心地 現実的な航続は270km前後 英編集部が評価

レクサスらしい大胆な面構成とシャープなライン

最近のSUVは、スポーティさを売り文句にすることが珍しくない。しかし、レクサスRZが強みとするのは、確かな操縦性や快適性だという。それでも、ツインモーターで313psという最高出力を備え、ホットハッチより鋭い加速を自ずと期待させる。

このRZは、レクサスが本格的に開発した初のバッテリーEVといえる。ひと回り小さい、電動のUXも存在はするが、主軸といえるのはハイブリッド版。販売数も、そこまで多くはない。

レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)
レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)

プラットフォームは、電動パワートレイン専用のe-TNGA。トヨタbZ4Xスバルソルテラも基礎骨格とするもので、テスラモデルY日産アリアヒョンデアイオニック5などと競合する車格を持つ。

2024年には、既存のRZ 450eの他に、シングルモーターで前輪駆動の廉価仕様も投入された。それはRZ 300eを名乗り、最高出力は203ps。価格価値と航続距離を改善し、競争力を高めることが狙いだという。

スタイリングは、レクサスらしい大胆な面構成とシャープなラインが特徴。全長は4805mmでモデルYと同等だが、クロスオーバーが並ぶショッピングモールの駐車場でも、存在感は強いはず。リアガラスは大きく傾斜する。

上位グレードの内装はしっかり豪華

車内空間は、そのサイズ感ほど広くはない。後席側にゆとりはあり、荷室も狭いわけではないが、ひと回り小さいモデル以上の余裕があるとはいえない。

内装の素材は、基本的にbZ4Xより上質ながら、仕様によって差は大きい。上位グレードでは、ソフトなレザーや目新しい化粧トリムなどで豪華に仕立てられるものの、そうでない場合、プラスティックであることを隠さない領域が小さくない。

レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)
レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)

上位グレードでは、エネルギー効率の良い赤外線ヒーターも装備される。太ももに熱気が伝わり、シートやステアリングホイールへ内蔵されるヒーターとともに、冬場の乗員を温めてくれる。その赤外線ヒーターを組むと、グローブボックスが使えなくなるが。

ダッシュボード中央のタッチモニターは、14.0インチ。インフォテインメント・システムは、スマートフォンと同等に扱いやすい。エアコンの操作パネルは、画面下部へ独立して備わる。

荷室の床下には、充電ケーブルをしまうのに丁度いい収納がある。他方、フロントのボンネット下に荷物は積めない。

首を痛めそうな加速 穏やかで滑らかな乗り心地

RZ 450eで公道へ出てみれば、2055kgの車重に313psだから至って活発。流れの速い郊外の道でもエネルギッシュに駆け、追い越しも余裕しゃくしゃく。最もスポーティなドライブモードを選ぶと、むち打ちになりそうな勢いを披露する。

レクサスは、軽負荷時にはリア側の109psのモーターがメインで働き、エネルギー消費を最小限に抑えるとしている。203psのフロント側は、フルスロットル時だけでなく、状況に応じて加勢する。0-100km/h加速は、5.5秒だ。

レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)
レクサスRZ 450e タクミ(英国仕様)

一方、RZ 300eでは0-100km/h加速が8.0秒へ落ちるものの、遅いと感じるほどではない。回転初期から大トルクが生まれる、電気モーターならではの印象といえる。

乗り心地は全般的に穏やかで滑らか。アダプティブダンパーは組まれないが、驚くほどラグジュアリーなマナーといえる。

レクサスがダイレクト4と呼ぶ、駆動用モーターの制御も効果的。加減速時に生じるフロントやリアの上下動、ピッチを、前後アクスルの駆動力と制動力で打ち消すというもの。革命的とまではいえないが、落ち着いた姿勢制御が素晴らしい。

RZ 450eでもフロントモーターの方が203psと強力で、パワーオンでのコーナリングは基本的にニュートラル。グリップ力は充分に高く安心感を伴う反面、エキサイティングなわけではない。ステアリングホイールには適度な重みがあり、操舵しやすいが。

前輪駆動のRZ 300eでは、ダイレクト4は非実装。それでも乗り心地は洗練され、操縦性も素直で好印象といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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