メルセデス-AMG C63 S

公開 : 2015.02.25 23:40  更新 : 2021.01.30 21:38

■どんな感じ?

まずはキャビンから。その他のAMGモデルの例に漏れず、期待する美しさや洗練は全て叶えられている。特別なモデルならではのインスツルメント・グラフィックや表情豊かなスポーツ・シートなどがその例だ。

フラット・ボトムのマルチファンクション・ステアリングやカーボン調トリムを目にすれば、車輪を転がす前から、この上のない充足感に浸ることができるのは、オーナーでない筆者でさえ嬉しいもの。

昨年末のAMG-GTのテストでも確かな手応えを得ているゆえ、走りだすまでに既に期待値は高ぶっている。

先代の6.2ℓもの大排気量ユニットと比べると、1/3しかない(それでも大きいけれど)4.0ℓユニットに火を入れると、ほんの一瞬の間をおいて、V8らしい勇ましいエグゾースト・ノートが耳に届く。

まずはコンフォート・モードにセットして走りだす。乗る前には、硬派な味付けを想像していたけれど、このモードで走る限りは、驚くほど柔軟性に富み、そして穏やかである。

だからといって、のったりとした印象はまるでない。大人しくありながら、どこか鼻息の荒さを感じるのは、エンジンのシャープネスとエネルギッシュさゆえだろう。

ここまで快適なツーリングと、際立った反応のよさを高レベルで両立していると、あまりにも ’美味しいとこ取り’ すぎて、乗っているこちらが罪悪感を覚えてしまうほどだ。

もちろん思いっきりアクセスを踏み込めば、想像を超えたパフォーマンスを見せつけてくれるのは言うまでもない。3ステージにわかれた電制スタビリティ・コントロールの棲み分けも明確である。

なかでも気持ちがいいのは、そのサウンド。コンフォート・モードでは、’やや遠くから’ エグゾースト・ノートがゴロゴロと響くのが伝わってくる一方、レース・モードでは狂気的な ’雷鳴’ が響き渡る。

とてつもなく大きいサイズの太鼓の音をまじかで聴いているかのように、身体のなかでさまざまな器官が震えているのがわかる。注意しなければフラップ全開時の音の依存性から抜け出せなくなってしまう。

それだけに7速ATの仕立ては、やや残念。オートマティック・モードの滑らかな変速に無論文句はないものの、マニュアル・モードで走ると、高回転域での変速スピードにやや不満が生じるのだ。

炸裂感あふれる4.0ℓ V8との、わずかなキャラクターの相違がうまくすり合わせられると、高速域でもより一層楽しめるのではないかと感じた次第。現時点ではライバルのもつデュアル-クラッチ・ユニットが優勢だ。

0-100km/hタイムはC63 Sの場合、4秒フラット。現行のBMW M3が掲げる公表値からは0.1秒、先代のC63パフォーマンス・パッケージと比べると0.4秒の短縮である。

最高速度は249km/hに制限されているけれど、ドライバーズ・パッケージをオプションで選べば、290km/hまで拡張できる。

(少なくとも公表値では)経済性も飛躍的に向上している。アイドリング・ストップやブレーキ・エネルギー回生システム、コースティング機能によって、3.9km/ℓだった先代の複合サイクル燃費は12.2km/ℓへと進化した。

テスト期間の高速走行時の平均燃費は9.7km/ℓと、もちろん公表値からは下がるものの、’あの’ 6.2ℓユニットからの数字と比べると驚くべき進歩である。CO2排出量は192g/kmだ。

基準車で見られた優れたアジリティはこのモデルでも健在。ハンドリングの味付けも、これまでに比べると驚くほど表情が豊かになっており、サーキットはもちろんのこと一般道でも操舵していておもしろい。

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