アウディがスポーツカー再導入? 新デザイナーは初代『TT』の大ファン ただし組織再編が先

公開 : 2025.03.20 07:45

アウディは将来的に『TT』と『R8』を復活させる可能性があります。特にスポーツカーは「ブランドに不可欠」との認識ですが、人員削減など立て直しを進める中で優先順位は決して高くないと思われます。

ブランドに不可欠な存在

アウディは新型のスポーツモデルの発売を検討中で、そのインスピレーションの源として、初代『TT』が有力視されている。

過去1年半の間にTTとR8が生産終了となったことで、現在のアウディのラインナップからは、数十年ぶりに2ドア・スポーツカーが外れている。しかし、ゲルノート・デルナー最高経営責任者(CEO)は製品ラインナップの大幅な見直しの一環として、このセグメントへの再参入の可能性を示唆している。

アウディは将来的に、初代『TT』にインスピレーションを得たスポーツカーを投入する可能性がある。
アウディは将来的に、初代『TT』にインスピレーションを得たスポーツカーを投入する可能性がある。

2024年の業績発表の席で、記者からスポーツカーの導入を検討するかどうかを問われたデルナー氏は、「もちろん検討します。それ(スポーツカー)はブランドのDNAの一部であり、適切なタイミングでポートフォリオに組み込まなければなりません」と答えた。

デルナー氏は、アウディは7500人の人員削減を含む大規模な組織再編の最中であるため、ラインナップの拡大に言及することは適切ではないとしながらも、「アウディがどこに向かうべきか、そしてアウディがどこに向かっているのかについて、大局的に見ています。その方向性において、スポーツカーはそうした体制に不可欠です」と述べた。

同氏は、1980年代の四輪駆動車クワトロを「自動車の新時代を切り開いたクルマ」として挙げ、スポーツカーがアウディの過去において果たしてきた重要な役割を強調した。

また、アルミニウム構造をベースとした第2世代のA8や、燃費効率を重視したA2のようなクルマが、現在のラインナップにおいても引き続き重要な役割を果たしているという。

そして、特に重要なクルマとして名前が挙がったのが1990年代後半の初代TTだ。アウディの新しいデザイン責任者であるマッシモ・フラセラ氏(JLR出身)は、TTの熱烈なファンであるという。

「わたしはマッシモとあのクルマについて何度も語り合いました。あれは彼のキャリア全体を通してインスピレーションの源となったクルマです。彼がジウジアーロの下で働いていた頃、イタリアでTTが発売された日に休みを取ってミラノのアウディディーラーに行き、1日中ショールームでただクルマを眺めていたんです」

「素晴らしいのは、彼がキャリア全体を通じて、常にアウディを念頭に置いていたように見えることです。今こそ、マッシモ・フラセラの心からアウディを解き放つ時です」

フラセラ氏は前職で新型ランドローバーディフェンダーの開発に深く関わっていた。ディフェンダーはそれまでの伝統を継承しながら、現代的でミニマルな新しいデザイン哲学を取り入れている。デルナー氏は、こうしたアプローチがアウディにぴったりだと考えている。

「彼は、表現に必要なもの以外はすべて取り除くことで、可能な限りの最適化を図ろうとしています。それは、彼ならではのユニークな才能だと思います」とデルナー氏は言う。

初代TTのシンプルで機能的なデザインは、バウハウス芸術運動から多大な影響を受けている。そうした特徴の一部は、現代に合わせた再解釈が可能かもしれない。

しかし、デルナー氏は自動車メーカーとして「過去を模倣することはできない」と強調し、「アウディの本質とは何かを分析し、その本質を活かしてまったく新しいものを生み出さなくてはならない」と述べた。

「過去の名車の模倣は、明らかに間違ったやり方です」としたが、アウディが歴史的なモデルを復活させる可能性は「考えられる(thinkable)」と付け加えた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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