【電動化911『GTS』初試乗】高めたかったのは最後の数パーセント!ポルシェのエンジニアが出した最適解とは

公開 : 2025.03.20 12:45  更新 : 2025.03.21 17:53

ついに911も電動化です。歴史上初となるハイブリッドモデル『ポルシェ911カレラGTS』に試乗します。そこで見えたのは、ポルシェのエンジニアが見せた矜持ともいえる最適解でした。吉田拓生のレポートです。

電動化がGTS成立のキーとなる?

ついにポルシェ911にも電動化システムが組み込まれることになる! そんなニュースを聞いたのは昨年の春ごろ、992型911の改良進化型が発表された時だった。今回ようやく、ハイブリッドモデルである『ポルシェ911カレラGTS』(以下911GTS)を試すチャンスが巡ってきた。

では911GTSの説明から。同社が超軽量なハイブリッドシステムと主張する『T-ハイブリッド』は、8速PDKの内部に仕込まれた最高出力54psの駆動用モーターと、1.9kWhのリチウムイオンバッテリー等で構成されている。

911の歴史上初のハイブリッドモデルとなる『ポルシェ911カレラGTS』。
911の歴史上初のハイブリッドモデルとなる『ポルシェ911カレラGTS』。    田中秀宣

水平対向6気筒エンジンはベーシックな3Lではなく3.6L版となり、エンジン単体の最高出力は485ps、システム最高出力は541psに達している。

現行911に搭載されている過給エンジンは全てツインターボとなっていたが、911GTSのパワーユニットには1基400V駆動の電動ターボが採用されている。しかもこの電動ターボチャージャーは、排気の力を利用して発電する機能も備えているという。

マイルドハイブリッドとしては強めの駆動用モーターや最新の電動ターボが、排気量が多め目のフラット6を全方位的にアシストする形になる。

さらに標準で後輪操舵も付いているという点も鑑みれば、新型の911GTSが加速だけでなくハンドリング性能にも秀でたモデルであること、それと同時にグレード名が的外れではないこともわかる。歴代の911GTSは、『カレラS以上、ターボ以下』というポジションを与えられた高性能モデルだったからである。

電動化の主張は少なめ、加速は図太く!

試乗車のボディカラーは、ウェブサイトでよく見かける『スレートグレーネオ』だった。さっそくクルマの周囲を見て回ったのだが、以前写真で見たはずの『T-hybrid』の文字が見当たらなかった。

リアに911のエンブレム、ドアの下縁にGTSのデカールがあるだけなのだ。デカール以外のGTSの識別ポイントは、フロントバンパー左右にあるインテーク内のブレードが縦方向になっていることである。

センターディスプレイの画面を切り替えると電動化システムのページが現れる(本国仕様)。
センターディスプレイの画面を切り替えると電動化システムのページが現れる(本国仕様)。    ポルシェ

今度は運転席で電動化の特徴を探してみたのだが、こちらも控え目な感じだった。EV走行モードがあるわけではないので、メーターディスプレイ内にEV航続距離やバッテリー残量のような表示はない。

センターディスプレイの画面を切り替えるとようやく電動化システムのページが見つかった。それによれば、駆動用バッテリーはダッシュボードのすぐ裏あたりに積まれているようだ。リアを重くしたくない911らしいこだわりである。

ちなみに車検証の軸重は、フロント590kg対リア1040kg。先日試乗した911カレラは580kg対990kgだったので、その差は60kgということになる。

ともあれ乗ってみよう。992.2型から採用されたスタートボタンでエンジンを始動させると、かなり勇ましい排気音が鳴り響いた。タウンスピードでは、普通のカレラより少しだけ重厚な感じがするくらいだった。

ところが高速道路の合流で加速をしてみると、その図太いパワー感に驚かされた。ターボというより、自然吸気の大排気量エンジンの如し。パワーカーブが一直線に上がっていく感じだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    田中秀宣

    Hidenobu Tanaka

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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