整備士泣かせ? 作りが複雑すぎるクルマ 17選 驚くほど手の込んだ構造

公開 : 2025.03.22 18:25

自動車はとても複雑な機械ですが、その複雑さを恐ろしいレベルにまで高めたものがあります。ルーフの開閉機構、先進的すぎたデジタル機器、エンジンを二段重ねした「H型」ユニットなど、非常に手の込んだクルマを紹介します。

性能や先進性にこだわりすぎた結果…

自動車はとても複雑な機械だが、新しい技術的境地を開拓しようとする中で、その複雑さが恐ろしいレベルに達したものもある。

時にはそれが成功し、また時には失敗につながる。写真のメルセデス・ベンツ600のように、過剰なまでに設計にこだわった結果、必要以上に複雑になってしまったクルマもある。

「シンプルさ」とは無縁のクルマを17台紹介する。
「シンプルさ」とは無縁のクルマを17台紹介する。

複雑化した要因が何であれ、今回は非常に手の込んだ設計のクルマをいくつか年代順に紹介しよう。

フォード・フェアレーン500スカイライナー(1957年)

開閉式ハードトップを備えた最初のクーペ・カブリオレが、フォード・フェアレーン500スカイライナーだ。量産車として初めてルーフに自動開閉機構を持たせたモデルであり、4万5000台以上が販売された。ルーフは複数のセクションで構成され、開くときはリアデッキの下に収納される。

この開閉動作をスムーズに行うために、7つのリバーシブル電動モーター、4つのリフトジャッキ、10個のソレノイド、さらに10個のリミットスイッチ、4つのロック機構が必要とされた。さらに、これらすべてを機能させるために長さ607フィート(185m)の配線も必要で、スカイライナーは発売当時、最も複雑なオープントップモデルとなった。

フォード・フェアレーン500スカイライナー(1957年)
フォード・フェアレーン500スカイライナー(1957年)

ローバーP6(1963年)

1960年代までは、ローバーは少し地味で堅苦しいイメージを持たれていたかもしれないが、P6の登場でそのイメージは一変した。P6は、精力的な若手エグゼクティブ(企業幹部)をターゲットに、優れた乗り心地とハンドリング、そして高い安全性の実現を目指した。その多くは、ボディパネル全体にストレスがかからないように設計されたメイン構造によるものだ。

P6のもう1の特徴として、ベルクランク式のフロントサスペンションが挙げられる。これにより快適性が向上し、また、ガスタービンエンジンを搭載できるようにエンジンルームも広くなった。しかし、ガスタービンの導入は結局見送られ、代わりにGM由来の3.5L V8エンジンが搭載されることとなった。こうした設計上の特徴により、現在ではP6の修理の難易度は高くなっているが、当時は人気につながった。

ローバーP6(1963年)
ローバーP6(1963年)

メルセデス・ベンツ600(1964年)

「技術的傑作」と評されるクルマは、構造が複雑であるという点で眉をひそめられる可能性が高いが、メルセデス・ベンツ600のW100シリーズもまさにそうだった。このモデルはエアサスペンションと2つの暖房システムを搭載し、パワーウインドウと集中ロックには油圧系統を使う。さらに、キャブレターが一般的だった時代に、ボッシュ製の燃料噴射システムを採用している。

他のメーカーであれば、これだけの装備を前に怖気づくだろう。しかし、W100の製造品質は完璧だった。1981年に生産終了になるまで、世界のリーダーたちに選ばれていたのも不思議ではない。しかし、その複雑さゆえ、600の修復やメンテナンスは現在では非常に厄介である。手入れの行き届いた車両は、標準的なセダンモデルで10万ドル(約1500万円)、独裁者仕様のストレッチモデルのプルマンではそれ以上の価格で取引されている。

メルセデス・ベンツ600(1964年)
メルセデス・ベンツ600(1964年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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