シルキーシックスが魅力の核 BMW X3 M50へ試乗 適度なサイズが生む出色の運転体験

公開 : 2025.04.06 19:05

守備範囲の広いB58型ユニットが載る、X3 M50 最高出力398ps 0-100km/h加速4.6秒 グラフィックや内装には指摘したい部分も 運転体験は間違いなく素晴らしい 英編集部が評価

守備範囲が極めて広いB58型ユニット

BMWファンの多くは、モデル名以上にコード番号で車種を識別することが少なくない。初代M3はE30型で、現行の3シリーズはG20型、5シリーズはG60型と呼ばれている。その方がわかりやすい、という読者はいらっしゃるだろう。

1歩踏み込むと、エンジンにもコード番号が振られている。例えばE30型に載っていた4気筒エンジンは、B23型と呼ばれる。最近のユニットで外せないのは、B58型。3.0L直列6気筒ガソリンターボで、傑作の1つに数えていいだろう。

BMW X3 M50 xドライブ(英国仕様)
BMW X3 M50 xドライブ(英国仕様)

守備範囲は広く、現行の3シリーズ、340iだけでなく、BMW X5にも搭載されている。今回試乗した、X3 M50の動力源でもある。

活躍の場は、メーカーの枠を超える。ロードスターのモーガン・プラス・シックスに、SUVのイネオス・グレナディア、2ドアクーペのトヨタスープラにも採用されている。BMW本社の一角には、このエンジンを崇める祭壇があるかもしれない。

AUTOCARでは既に、新しい4代目X3へ試乗している。だがそれには、2.0L 4気筒ガソリンターボが積まれていた。リフレッシュされたスタイリングやインテリア、悪くない実用性を備えることは確かめている。しかし、走りのダイナミックさは高くなかった。

では、この傑作ユニット、B58型エンジンを積んだらどうなるのか。果たして、X3の印象は更に良くなる。訴求力は確実に増す。

最高出力398ps 0-100km/h加速4.6秒

X3 M50は、正式なMモデル、X3 Mではない。BMWが呼ぶところの、Mパフォーマンスではある。それでも、動力性能は高水準。最高出力は398ps、最大トルクは59.0kg-mが主張され、0-100km/h加速は4.6秒で処理される。

滑らかに回転し、ターボラグは最小限。ザラついたノイズも抑えられている。スロットルレスポンスは抜群で、即座に痛快なパワーが繰り出される。多くのBMWへ載る8速ATとの相性も素晴らしく、豪快にボディを突き進める。

BMW X3 M50 xドライブ(英国仕様)
BMW X3 M50 xドライブ(英国仕様)

X3 M50では、シャシーの能力にも唸らされる。アダプティブダンパーはオプションだが、減衰特性は素晴らしい。高速域でも乗り心地がしっとり落ち着くことはないものの、カーブでの安定性は圧巻だ。

ステアリングは極めて正確。適度な重み付けで、手のひらには、不満なく路面の情報が伝わってくる。四輪駆動システムのトルク分配は、明らかにリア寄り。間違いなく、運転の楽しいSUVだ。

普段使いとの親和性は、出色とまではいえないだろう。乗り心地は、どのモードでも硬め。滑らかな路面でも、細かな揺れは続く。コンフォートというモード名へ、疑問を抱きたくなるほど。更に引き締まる、スポーツ・モードも用意される。

もっとも、シートは設計に優れ、遮音性は高い。大きく不快なわけではない。

パワートレインで気になった点が1つ。8速ATは、DとRとの切り替え時に、長めの一呼吸がある。駐車時の切り返しなどは、焦らずギアが入ったことを確かめたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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