復活がココから始まる ランチア・イプシロンへ試乗 走りの印象はe-208似 マイルドHV版も

公開 : 2025.04.01 19:05

風前の灯だったランチアはイプシロンで復活へ 走りの印象はe-208やコルサ・エレクトリック似 ストラトスを彷彿とさせるテールライト 航続距離は402km 英編集部がイタリアで初対面

風前の灯だったランチア イプシロンで復活へ

アウレリアにベータ、ストラトス、デルタ。数多くの名車を排出してきたランチアは、まさに風前の灯だった。2017年以降、ディーラーに並んでいたモデルは1車種のみ。限定された市場で、フィアット500がベースのイプシロンが売られていただけだった。

かつてのフィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)を率い、2018年にこの世を去ったセルジオ・マルキオンネ氏も、恐らく悔やんでいたに違いない。それでも、最新技術への関心が高くない、イタリア人による忠誠心は小さくなかった。

ランチア・イプシロン・エレットリカ(欧州仕様)
ランチア・イプシロン・エレットリカ(欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ランチアは、ステランティス・グループによって復活を遂げる。復活するのに充分な開発資金を捻出した、現会長のカルロス・タバレス氏の功績は大きい。4代目イプシロンが、遂に公道を走る時がやって来た。

創業者のヴィンチェンツォ・ランチア氏が、自らの名字を冠した自動車メーカーをトリノに立ち上げたのは、1906年。現在は、フィアットとランチアのクラシックカー・コレクション、FCAヘリテージ・ハブが、ミラフィオーリ工場に併設されている。

今回はその創業の地で、新生イプシロンを試乗させていただけるという。ランチアというブランドの価値も、改めて確かめられるだろう。

走りの印象はe-208やコルサ・エレクトリック似

新しいイプシロンは、エンジン版のイブリダと、モーター版のエレットリカを選べる。後者はランチア初のバッテリーEVで、試乗車もそれだった。

前者には、100psを発揮するマイルド・ハイブリッドの1.2Lガソリンターボエンジンが
載る。他方、エレットリカには、156psの駆動用モーターと51kWhのバッテリーが積まれる。これらの数字は、ステランティス・グループのクルマでは見慣れたものだ。

ランチア・イプシロン・エレットリカ(欧州仕様)
ランチア・イプシロン・エレットリカ(欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

プラットフォームも、同グループのe-CMP。多くの小型車の、基礎骨格をなしている。

市街地へ出てみると、印象はプジョーe-208やオペル・コルサ・エレクトリックと殆ど同じ。ブランドらしさは薄いかもしれないが、悪いこととはいえない。欧州市場では好調に売れているモデルで、乗り心地や操縦性は、さほど重視されるカテゴリーではない。

高速道路での走りは、至って滑らか。力強く洗練度が高く、快適性は優秀。インターチェンジのカーブも鋭く旋回していく。とはいえ、ランチアといえばラリーのイメージが強いはず。そんなファンへ向けて、イプシロン HFも登場予定にある。

均質化が進む現在のクルマで、主な購入動機となるのはコストとデザインだろう。内容は近くても、ジープアベンジャーを選ぶ人がいれば、アルファ・ロメオジュニアを契約する人もいる。

ランチアは、古くからデザインを重視してきた。技術的な相関性が深まる中で、スタイリングやインテリアへ拘るという戦略は、理に適ったものといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    役職:主任副編集長
    AUTOCARのオンラインおよび印刷版で公開されるすべての記事の編集と事実確認を担当している。自動車業界に関する報道の経験は8年以上になる。ニュースやレビューも頻繁に寄稿しており、専門分野はモータースポーツ。F1ドライバーへの取材経験もある。また、歴史に強い関心を持ち、1895年まで遡る AUTOCAR誌 のアーカイブの管理も担当している。これまで運転した中で最高のクルマは、BMW M2。その他、スバルBRZ、トヨタGR86、マツダMX-5など、パワーに頼りすぎない軽量車も好き。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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