【10年経っても変わらぬ魅力】押し出しは控えめで走りは穏やか!新型ボルボXC90は同クラスSUVで貴重な存在

公開 : 2025.03.24 11:45

2014年にワールドプレミアされ、2年後に日本でも発売された『ボルボXC90』ですが、デビューから10年を過ぎてもコンスタントに売れ続けているその魅力とは何でしょうか。そのマイナーチェンジモデルに試乗した森口将之のレポートです。

XC90から始まった攻めの戦略

この10年間でデザインも走りも一気に洗練されたボルボ。その先導役を務めたのが2014年にワールドプレミアされ、2年後に我が国で発売された2代目『ボルボXC90』だ。

ボルボはジーリー(吉利)グループ入りした2010年代になって、すべてのラインナップのプラットフォームを一新するという大改革を実施。中〜大型車向けのSPA(スケーラブル・スペース・アーキテクチャー)と、小型車向けのCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)を相次いで開発した。

ビッグマイナーチェンジを受け日本でも発売開始されたボルボXC90。
ビッグマイナーチェンジを受け日本でも発売開始されたボルボXC90。    中島仁菜

これに合わせてエンジンはすべて2L直列4気筒ターボに統一し、電動化への対応も開始。デザインは『コンセプト・クーペ』、『コンセプト・エックス』、『コンセプト・エステート』という3台のコンセプトカーをお披露目しながら煮詰めていった。

この流れの中からいち早く世に送り出された市販車がXC90であり、その後登場したXC60XC40などは、すべてXC90に始まる攻めの戦略の中で生まれてきた車種なのである。

そのXC90が昨年9月にマイナーチェンジを発表し、2月に日本にも上陸した。EVについてはひと足先にEX90がデビューしているので、こちらはプラグインとマイルドのハイブリッド(PHEV/MHEV)となる。

本国での発表時には、2030年までにすべてのモデルをEVにするというロードマップを、2025年までに50~60%、2030年までに90~100%をEVあるいはPHEVにするという、目標時期の変更もアナウンスされていた。XC90のアップデートは、この方針に基づくものとも言える。

クルマのグリルではあまり見たことがない処理

その新型に、東京都内で試乗することができた。グレードは『プラス』と『ウルトラ』があり、MHEVのB5 AWDは両方を用意。PHEVはウルトラのみで、試乗車は『XC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド』が正式名称となる後者だった。

現行XC90は、六角形のフロントグリルと『トールハンマー』と呼ばれる横T字型ヘッドランプからなるフロントマスク、『VOLVO』のロゴを離して置き、縦長リアコンビランプで挟むリアスタイルを確立したモデルでもある。

センターディスプレイの大型化が目立つインテリア。レイアウトも変更されている。
センターディスプレイの大型化が目立つインテリア。レイアウトも変更されている。    中島仁菜

新型はまず、グリル内のバーが縦から斜めになったことが目立つ。『アイアンマーク』と呼ばれるエンブレムの矢印、そこから伸びるバーに角度を合わせたものだが、クルマのグリルではあまり見たことがない処理で、柔軟な発想に感心した。

それ以外もヘッドランプがグリルとつながり、フロントバンパーの造形がすっきりしたことにも気づく。サイドではアルミホイールのデザインが一新され、リアはコンビランプが、点灯部分だけ赤く浮き上がる見た目に変わった。

インテリアはセンターディスプレイの大型化が目立つ。レイアウトも変更されており、たとえばドライブモードのボタンは階層の奥ではなくメイン画面に出された。さらにインパネやドアトリムの造形や素材も変わっている。

エアコンルーバーのフィンが、他のボルボと同じ縦長に変わったこともニュース。フルデジタルのメーター、Googleのマップや音声認識システムなどは2022年に導入されていて、ディスプレイともども最新モードになったと実感する。

北欧生まれならではのデザインへのこだわりを実感するのは、ドアトリムの上端が前後ともゆるくカーブしていたり、ヘッドレストの裏やサードシートのレバーまできちんと造形が行き届いていたりすること。こういう部分を適当にあしらうクルマが多い中、細部に至るまで手を抜いていないことに感心した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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