NSXの前奏曲!今明かされる『ホンダHP-X』の全貌【#02プロジェクトがスタート】

公開 : 2025.03.27 11:45  更新 : 2025.03.28 11:33

2024年8月、北米モントレーで開催されたペブルビーチ・コンクールデレガンスに、ホンダHP-Xと呼ばれるコンセプトカーが出展されました。その歴史を紐解いていくと、実はNSXとの関係性を見いだせるのです。越湖信一による短期集中連載、その第2弾です。

ピニンファリーナにチャンス到来

1983年に本田宗一郎、藤沢武夫が取締役を退き、久米是志が社長となり、ホンダにとっても新しい時代を迎える。それはピニンファリーナにとってもチャンスであった。早速、フィオラバンティらは日本へ赴き、コンサルティングの長期契約を更新した。

そこで、「彼らが構想中のミッドエンジン、ツーシーターのコンセプトモデル構築の発注を受けた」とフィオラバンティは後年、語っている。ここにHP-Xプロジェクトがスタートしたのである。ちなみにHPはホンダとピニンファリーナ、Xは『eXperimental』を意味している。

車名のHP-Xは、HPがホンダとピニンファリーナ、Xが『eXperimental』を意味している。
車名のHP-Xは、HPがホンダとピニンファリーナ、Xが『eXperimental』を意味している。    ピニンファリーナ

ホンダからすると、本格的に未来のNSXプロジェクトがスタートしたのは、1982年2代目プレリュードの大ヒットを見てのことであるようだ。このプレリュードの成功により、ホンダマン達の内部でくすぶっていた本物のスーパーカーを作ろうという『種火』に、本格的な火がつくことになる。そしてホンダからのアクションが始まった。

レオナルド・フィオラヴァンティの回想

レオナルド・フィオラヴァンティは、以下のように回想する。

「彼らが私たちに提供してくれたのはエンジンだけでした。フォーミュラ2用のハイパフォーマンスユニットです。ピニンファリーナはグルリアスコ工場で、そのニーズに合ったシャシーを設計しました。

ピニンファリーナと深い関係にあったフェラーリとは、別のアプローチが必要となった。
ピニンファリーナと深い関係にあったフェラーリとは、別のアプローチが必要となった。    ピニンファリーナ

当初はランチア・モンテカルロのような、市販モデルをベースとしたミディアムレンジの車格を想定していたものの、よりハイパフォーマンスなトップエンドモデルへのプランへと変貌していったのです。私はダラーラ社とコンタクトを取り、コンペティションモデルにふさわしいシャシーの開発を行いました」

そのフォーミュラ2用エンジンとは、1980年ホンダがF2復帰のために開発した2リッター V6DOHCエンジンであった。

ピニンファリーナはこのようなエンジニアリング要件をベースに、スタイリングのコンセプト確定へと進んだ。そこで重要なことは、ピニンファリーナの重要なクライアントであるフェラーリとは全く異なったアプローチを行うということであった。

F1でお互い強力なライバル同士の両社であるから、ここでピニンファリーナとしては、フェラーリのイメージを引きずった提案をするわけにはいかない。そもそも、ピニンファリーナとしてホンダとのコラボレーションを行うこと自体とてもナーバスなことと考えており、あくまでホンダへの提案は決してフェラーリのラインナップにかぶることはないと繰り返し説明していたという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    越湖信一

    Shinichi Ekko

    イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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