EU追加関税に苦しむ欧州メーカー VW傘下のセアト「人員削減」に踏み切る可能性も
公開 : 2025.03.27 07:45
中国製EVに対して欧州連合が課した追加関税ですが、一部の欧州車メーカーからは「撤廃」を求める声が上がっています。VWグループ傘下のセアトは一部モデルの生産中止や人員削減の可能性があると警告しています。
製品構成見直し? 追加関税の撤廃求める
フォルクスワーゲン傘下でスペインの自動車メーカーであるセアトは、欧州連合(EU)が中国製EVに課した輸入関税の影響により、一部モデルの生産を中止し、「人員削減に踏み切る」可能性があるとした。製品構成を見直し、多額の損失を取り戻す必要に迫られている。
同社は現在、4万7000ポンド(約910万円)のSUV『タバスカン』を中国で生産しており、2024年10月以来EUが課している20.7%の追加関税(従来の10%に上乗せ)の影響を受けている。

この追加関税は、中国政府の補助金を受ける中国ブランドが車両価格を低く設定し、欧州の自動車メーカーを圧迫していることへの対抗手段として導入された。
しかし、AUTOCARの取材に応じたセアトのCEO、ウェイン・グリフィス氏は、関税は「欧州やスペインを守るものではなく、むしろダメージを与えるものです」と語り、排出ガス目標の達成に影響が及ぶとして危機感を示した。
同氏は、販売減や高額な罰金といった財務的な影響により、セアトは人員削減とエンジン搭載車のラインナップ縮小を余儀なくされる可能性があるとした。
「人員削減に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。当社は現在、顧客に代わって関税を支払っていますが、これを続けることはできません」とグリフィス氏は話す。
関税が撤廃されない場合、「セアト・イビサ(小型ハッチバック)とアローナ(小型SUV)の生産を中止せざるを得ない」とし、「エンジン車の生産を削減」して、販売構成を見直す必要があるという。
グリフィス氏は、生産停止が恒久的なものか一時的なものかを明らかにしなかった。昨年12月、セアトは2025年後半にイビサとアローナを大幅にアップデートし、ハイブリッド・パワートレインを導入すると発表した。
グリフィス氏によると、こうした危機感は欧州の立法関係者にも伝わっているという。「彼らもその影響を理解しています。だから彼らにも理解しようという姿勢があります」
「今、わたし達は複雑な法律の枠組みの中で解決策を見つけようとしています。この問題はすべての人とメーカーに影響を与えます。わたし達は現在この問題に取り組んでおり、より良い解決策としてさまざまな仕組みを利用できます」
同氏は、中国製EVの追加関税を7.8%に抑えることに成功したテスラを引き合いに出した。
「セアトは欧州委員会とともにあらゆる選択肢を検討しています。そして良いことに、スペイン政府が解決策を見つけるための支援をしてくれています」
どのような解決策を望むかと尋ねられた同氏は、「ゼロ」と答え、「ゼロではないにしても、ゼロに近いもの。10%(の輸入関税)です。当時、あらゆる決定の基準となっていました」と付け加えた。
グリフィス氏は次のように結論付けた。
「政策立案者が理解すべきなのは、メーカーの決定は、技術、モデル、プラットフォーム、生産拠点に関わる長期的な決定であるということです。ある日を境に急に変えることはできないので、長期的な信頼性が必要なのです」
「ゲームの最中にルールを変え始めると、ゲームをプレイするのが難しくなります。そこには確実性が必要だと思います」
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