EVをさらに静かにする BMWのラボの内側 外界から遮断されたハイテク音響風洞

公開 : 2025.03.27 18:45

パワートレインの音が静かなEVでは、走行風やタイヤから発生するノイズの低減が大きな課題となっています。BMWは最新の音響風洞施設を設け、振動や騒音を抑えるための研究開発を進めています。

騒音や振動をより正確に測定

ほとんど音を発しないEVへのシフトに伴い、風切り音、タイヤ、振動などによる騒音を抑えるための研究開発が、特に高級車メーカーの間でますます盛んになってきている。

BMWは最近、40年近く使用してきた音響風洞に代わる新しい試験施設として、エアロアコースティックおよび電動ドライブセンター(AEC)を開設した。

BMWはミュンヘンに新設した「エアロアコースティックおよび電動ドライブセンター(AEC)」で音響風洞の試験を行っている。
BMWはミュンヘンに新設した「エアロアコースティックおよび電動ドライブセンター(AEC)」で音響風洞の試験を行っている。    BMW

AECはミュンヘンのBMWグループの研究イノベーションセンター(FIZ)に位置し、EV駆動系の急速な発展に対応すべく、2つのセクションで構成されている。

1つは多機能施設で、プロトタイプ作業用のワークショップと試験装置を備えており、もう1つは長さ100m、高さ45m、幅25mの世界最大かつ最も静かとされるエアロアコースティック風洞である。

当然のことながら、静かなEVの車内外の騒音レベルを正確に測定できるようにするには、使用する機器だけでなく、建物の構造自体にも配慮しなければならない。

2棟ある建物は、周囲の環境から遮断するために巨大なピット内に建設され、厚さ3mの床板と防音壁により、外部の騒音や振動から切り離されている。

建物同士は部分的に分離され(BMWは「セミデタッチド・ハウス」に例えている)、2棟目にはワークショップ、試験および測定用スタンド、プロトタイプ組み立てラインが収容されている。

このセクションは1万5000平方メートルのフロア面積を有し、さらに800平方メートルのスペースが、将来のクリーンルーム環境でのインバーター製造用に確保されている。

メインのテスト室の背景騒音レベルは、ローラー上を140km/hで走るクルマの騒音と同等の54.3dBAだ。BMWはこれについて、小声で会話するときや静かな空調システムと同等のレベルと表現している。

邪魔な騒音が非常に低いレベルであるため、向かい風によるノイズをより正確に測定することができる。

この風洞では、4.5MWの送風機により最大約250km/hの風速を再現可能だ。この速度では1分間に10万立方メートルの空気が風洞内を流れる。

室内は音響的には半自由音場(半無響室)とされており、床面を除いて音を一切反響しない。

音を測定する最新機器の1つに、音源を1cm以内の精度で特定できる216個のマイクロフォンを備えた「音響カメラ」がある。

また、風洞には、機械的な接触ではなくレーザー光を使用して車両表面の振動を測定するレーザー振動計測システムも備えている。

車両が静止状態でも、ローラー上を走行中であっても、また風がある場合もない場合も、音響試験を行うことができる。

記事に関わった人々

  • ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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