【A4改めA5国内初試乗】まるで分厚いコートを脱いだような軽やかさ!A5の乗り味にアウディ新世代を見た

公開 : 2025.03.26 11:05

これまでのA4とA5スポーツバックを統合してフルモデルチェンジを果たした、新型アウディA5に試乗します。しかし、変わったのは車名だけではなかったようです。昨年海外試乗会にも参加している大谷達也が、その変化を解説します。

クワトロを生み出した流れ

アウディといえばスタビリティとトラクション。私は常々そんな印象を抱いていた。

戦後、前輪駆動に始まってフルタイム4WDのクワトロを生み出していった流れは、まさにトラクションを重視した姿勢の表れ。ちなみにフロントエンジンの前輪駆動は、ミドシップやリアエンジン同様、エンジンの荷重が駆動輪にしっかりかかるという意味において、優れたトラクションを確保するのに有利なレイアウトといえる。

今回から車名をA4からA5に変更。取材車はセダンのTFSI 110kW。
今回から車名をA4からA5に変更。取材車はセダンのTFSI 110kW。    山田真人

そしてスタビリティ。並大抵のことでは進路を乱されず、フラットな姿勢を保ちながら一直線に突き進んでいく。そんなシャシーセットアップを目指すことが、アウディのひとつの伝統であると私は捉えていた。

しかし、久しぶりに登場したアウディのエンジン搭載車である新型A5は、こうした伝統に微妙な修正が加えられたことを思わせる仕上がりだった。

これに気づいたのは、昨年10月に南フランスで開催されたA5国際試乗会に参加したときのこと。その足まわりは、これまでのドッシリとしたフラット感重視の味付けから、微妙に弾むような感触で軽快感を強調した乗り味に変わっていたのだ。

といっても、これまでと正反対の方向性に一新されたわけではない。従来のスタビリティやトラクションを重視する姿勢を維持しつつ、そこに軽快感が付け加えられたような味付けに見直されたのである。おかげで、これまでのアウディの美点を損なうことなく、素直なステアリングレスポンスという新たな魅力を手に入れたように思えたのだ。

唯一弱点と思われた、TFSIのキャラクター

そんな新型A5で唯一弱点と思われたのが、TFSIと呼ばれるガソリンエンジンのキャラクター。回転の上昇が伸びやかでスムーズな点は好ましいのだけれど、発進時の動き出しがおっとりしているというか、スロットルペダルを踏み込んでからワンテンポ遅れて動き出すように感じられたのだ。

こうした傾向は、同じ新型A5でもTDIと呼ばれるディーゼルエンジン搭載モデルであれば、まったく見受けられなかった。それどころか、低回転域で大トルクを発生するディーゼルエンジンならではの特性に加え、TDIには新たにMHEVプラスと呼ばれる強力な48Vマイルドハイブリッドが採用されたおかげで、発進時の身のこなしは俊敏そのもの。ちょっと大げさにいえば、スポーツカーにも通ずる軽快さがTDIからは伝わってきたのだ。

ラインナップはセダンとアバント(ワゴン)だが、セダンもハッチゲートを持つタイプに。
ラインナップはセダンとアバント(ワゴン)だが、セダンもハッチゲートを持つタイプに。    アウディ ジャパン

それからおよそ半年。新型A5が早々と日本上陸を果たした。そのラインナップを下から順に紹介すると、150psの2.0リッターガソリンエンジンを積んだ前輪駆動の『TFSI』、204psの2.0リッターガソリンエンジンに4輪駆動を組み合わせた『TFSI クワトロ』、同じく204psの2.0リッターディーゼルエンジンに4輪駆動を組み合わせた『TDI クワトロ』となる。

以上、3タイプのドライブトレインをセダンとアバント(ワゴン)のそれぞれに設定した計6台が新型A5の主力グレード。これに、367psを発揮する3.0リッターV6ガソリンエンジンとクワトロを組み合わせた『S5』(セダンとアバントから選択可能)を加えた計8グレードで日本仕様のA5ファミリーは構成される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×