【詳細データテスト】ポルシェ911 適度なハイブリッド GT3に次ぐ走り 公道ではベストな911

公開 : 2025.03.29 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

並外れた上下方向のボディコントロールもあって、GTSの軽やかに向きを変えて曲がっていく動きは強烈に鋭く、カレラ系の下位グレードとははっきり違い、GT3に迫るフィールだ。多くのひとびとにとっては、正真正銘のスポーツカーの運動性能と、GTにシフトしている最近の911との間に位置するスイートスポットに思えるだろう。

もちろん、日々付き合うならカレラSのシルキーさを好むユーザーもいるだろうし、公道ではGT3の弾けるようなアジリティや尖ったところが必要ないという声も少なくないはずだ。GTSは長らくライトなGT3のように言われてきたが、今回はまさにそういうものになっている。

GT3に迫る鋭いハンドリング、スロットルで容易に向きを変えられるアジャスト性に、しなやかな乗り心地をプラスした、スポーツカーとGTの絶妙な落とし所。問題はフロントのインフォメーションと遮音性だ。
GT3に迫る鋭いハンドリング、スロットルで容易に向きを変えられるアジャスト性に、しなやかな乗り心地をプラスした、スポーツカーとGTの絶妙な落とし所。問題はフロントのインフォメーションと遮音性だ。    JACK HARRISON

サーキットに場を移すと、1600kgを超える重さをすぐに知ることになるが、公道ではクイックな動きのビルシュタインとほとんど感じさせない調整ぶりのスタンダードであり続ける後輪操舵のおかげで誤魔化せている。速くて路面をガッチリ捉え、ステアリングは軽くてイニシャルがクイック。このサイズのクルマでは不自然に感じられそうなところだが、そうはならず、このGTSと真剣に取り組みたい気にさせる。

後輪駆動なので、最新のカレラGTSは古き佳き911のように遊べるところもある。もちろん、電子制御が効いているので、ノーズが手に負えないほど上下したり、スロットルを抜いたときに背中を突かれたりすることはないが、精神的にはだ。

スロットルペダルは配慮が必要だ。ドライ路面でなければ、すぐに進行方向から逸れた軌跡を描いてしまう。しかも、911特有の重量配分は、コーナリング中に踏み込んで角度を変えやすいものだ。

新型GTSは、改良前よりリアタイヤがワイドだが、よりアジャストしやすいクルマになっている。唯一の問題はステアリングフィールで、悪くはないがフロントのグリップレベルをしっかり伝えてはくれない。機敏で刺激的なクルマにはそぐわないものだ。

洗練度については、ボディコントロールや大きく太いタイヤとホイールを考えれば驚くほどしなやかだ。快適性や視認性はクラストップレベルだが、静粛性は相変わらず911の弱みだ。113km/h巡航での室内騒音は71dBAで、これはノイズを伝えやすいカーボンモノコックに355幅のリアタイヤを履くランボルギーニレヴエルトと同等。オプションのリアシートによる遮音を期待したくなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事