ランチア・イプシロンが40周年を迎えた話【新米編集長コラム#25】

公開 : 2025.03.30 11:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第25回は、2025年で40周年を迎えた、我が愛車でもあるランチア・イプシロンがテーマです。

少なくとも国内では他にいない

『2015年2月24日にランチアから発表されたプレスリリースを見てここまで激しく反応した編集者は、少なくとも国内では他にいないと思う。ジュネーブ・ショーの概要を説明するリリースにある、”イプシロン30周年記念モデルを発表”という1文に激しく昂ってしまったのだ』。

いきなりであるが、これは約10年前の2015年10月に発売されたカー・マガジンNo.450で私が、『アウトビアンキY10・30周年特別企画(前編)』の冒頭で書いたものだ。なぜこれを引用したのかといえば、今週3月24日にランチアから、『ランチア・イプシロン:40年にわたる優雅さ、革新、そして成功』というプレスリリースが発行されたからである。

ランチア・イプシロン40周年ということで、歴代モデルを並べた写真が初公開。
ランチア・イプシロン40周年ということで、歴代モデルを並べた写真が初公開。    ステランティス

今回のプレスリリースに激しく反応した編集者は、少なくとも国内では他にいないだろう……と10年前と同じことを感じつつ、半ば義務感にも駆られてこの原稿を書いている。『2025年はランチア・イプシロン40周年ですよ!!!!!!』と。

10年前にイプシロン30周年記念モデルが登場した際、1985年のY10を初代イプシロンとメーカーが認識していたことに少し驚いた。てっきりYと書いてイプシロンと読む、1995年に登場したモデルが初代だと思っていたからだ。

しかし長年販売されたアウトビアンキA112の後継として登場したY10(イプシロン・テンもしくはディエチ)が、1995年の2代目Y(イプシロン)に繋がり、筆者も所有する2003年に登場した3代目イプシロン、同じく2011年の4代目イプシロンへと続き、そして10年前には想像もできなかったことだが、2024年2月14日に5代目、すなわち現行イプシロンが登場するのである。

ちなみに、日本とイタリアでは商標の関係で『ランチアY10』ではなく『アウトビアンキY10』と呼ばれ、日本ではJAXやマツダ系のオートザムで販売。その後もランチアは正規輸入されていないので、並行輸入という形で様々なスペシャルショップが導入している。私は2006年にガレーヂ伊太利屋から限定車となる『ランチア・イプシロン・モモデザイン』を新車で購入し、今も大事に乗っている。

5世代6台が並ぶ広報写真が公開

約10年前のカー・マガジンNo.451では『アウトビアンキY10・30周年特別企画(後編)』を記事化し、当時は本国の広報写真でも見たことのなかった4世代を並べての撮影を実現している。しかし今回、ようやく、いよいよ、ついに、しかも! 5世代6台の並ぶ広報写真が公開されたのは正直、かなり興奮した。Y10はフェイスリフトされた後期モデルも並んでいるではないか!

その後期Y10はイタリア・トリノの『ヘリテージハブ』と呼ばれる、フィアット系のクラシックモデルを保管する施設で展示されていて、実は、私は2019年に現地を取材した際に写真の車両そのものを見ている。しかし、それまで後期の存在を知らなかったので、現場で悶絶したのが忘れられない。

ヘリテージハブで展示されていたY10後期型、『ランチアY10アヴェニュー』。
ヘリテージハブで展示されていたY10後期型、『ランチアY10アヴェニュー』。    平井大介

以前も当コラムで書いたことだが、イプシロンの歴史における不幸は、故セルジオ・マルキオンネ氏がフィアット&クライスラーの連合体であるFCA時代に、クライスラーとランチアをセットにしたことだ。

経営者としては、両ブランドを残すために編み出した苦肉の策なのかもしれない。しかし、クライスラーをベースとしたランチア、ランチアをベースとしたクライスラーが数多く誕生するも、それらは市場で全く受け入れられず、10年前の時点で全て消滅していた。日本にも100台ほど右ハンドルのクライスラー・イプシロンが正規輸入されているので、ご記憶の方もいらっしゃるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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