【ホンダウエルカムプラザ青山休館で思う】1980年代ホンダ車は熱かった!開館当時に活躍した名車たち

公開 : 2025.04.05 11:45

『ホンダウエルカムプラザ青山』が3月31日に閉館、39年の歴史に幕を閉じました。建設された1985年、つまり1980年代のホンダ車は、今よりも熱量の多いクルマばかりだったように感じます。木原寛明が、当時の思い出を含めて6台をご紹介します。

シティターボ(1982年9月21日発売) 「まさにボーイズ・レーサー!」

1982年9月21日、ホンダは背の高いユニークな『トールボーイデザイン』の『ホンダ・シティ・シリーズ』に、ターボチャージャー付エンジンやホンダの独自開発による電子燃料噴射装置などの新技術を採用した小型高性能ターボ車『ホンダ・シティターボ』を加えた。

この『シティターボ』は、シティのもつ優れた動力性能と燃料経済性をもとに、ターボ付エンジンの極限を追求して開発。エンジンは、シティで採用した燃焼効率の高いコンバックス(高密度速 炎燃焼原理)エンジンをベースに、さらに高効率化を図ったニューコンバックスエンジンを搭載。

ホンダ・シティターボ
ホンダ・シティターボ    本田技研工業

これに高過給圧(0.75kg/cm2)を生み出す小型、高回転ターボチャージャーやホンダが独自開発をした高感度な電子燃料噴射装置(PGM-FI)を採用。さらに、高出力化にともなうエンジン構造の強化と徹底した摩擦抵抗の低減を図るなどにより、今までのターボ 車では類を見ない出力、トルク向上率50%アップを実現した高出力(100ps)と 高トルク(15.0kg-m)を発揮。同時に、ターボ車ではトップの低燃費18.6km/L(10モード燃費)も合わせて実現していた。

スリーサイズは全長3380mm、全幅1570mm、全高1460mm、ホイールベースは2220mm、車両重量は(わずか)690kg(!)。価格は109万円だった。

その走りは非常に過激でヤンチャなものだった。ターボの過給が見た目でわかるブーストメーターがフルブーストを告げると、5速マニュアルトランスミッションが1速、2速ではホイールスピンが発生し、専用のバケットシートのヘッドレストに頭が押さえつけられるように加速した。コーナリングも然り。アクセルのオンオフでクルマの向きが面白いように変わる反面、ウェット路面では「手に追えない」シーンもあった。

当時としては珍しく、速度レンジ『H』の高性能タイヤ(12インチ)を履いてはいたが、非常に軽い車重に加えて、ピーキーで高出力なエンジン、そして現代のクルマのようにESPやABSなどの安全装備を持っていなかったから、過激な走りであったのは当たり前と言えば当たり前だ。危険と言えば危険なクルマだが、愉しかったのもまた事実である。

シティ・ターボII(1983年11月10日発売)「過激というより迫真の速さ!」

シティターボの登場からわずか1年ちょっと。ホンダはさらに高性能な『ホンダ・シティ・ターボII』を、1983年11月10日に発売した。

エンジンは、シティ・ターボII専用に燃焼室形状を一段と発展させ、アンチノック性能をさらに向上させた『ニューコンバックスエンジン』を採用。また、このクラスに初めて小型、高効率のインタークーラーを装備し、無鉛ガソリン車で世界最高の過給圧0.85kg/cm2を達成。

ホンダ・シティ・ターボII
ホンダ・シティ・ターボII    本田技研工業

それと同時に高過給圧を生み出す小型、高回転ターボチャージャーや、つねに最適空燃費にコントロールする高感度な電子燃料噴射装置(PGM-FI)を採用。また、さまざまな運転状況のもとでもその能力を十分発揮させるために、過給圧を制御するウエストゲートコントロール機構にもPGM-FIを採用した。

これにより、小型でわずか1.2Lのエンジンから最高出力110ps、最大トルク16.3kg-mという高出力、高トルクを達成しながら、低燃費化(17.6km/L 10モード燃費)も合わせて実現した。

さらに、エンジン回転が4000rpm以下でスロットルを全開にした場合、過給圧を10秒間約10%もアップするスクランブルブーストを実現。アクセルを踏み込んだ瞬間の強力な加速応答性を可能としていた。また、エンジンの高出力をささえる総合性能の高いサスペンションや、新設計の超ワイドトレッド(フロント1400mm、リア1390mm)により走行安定性にすぐれた設計としていた。

外観デザインは、ダイナミックフェンダー、ボディと一体感のあるエアロスカート、ビックパワーバルジなどにより、走りのイメージをより印象づけている。さらに室内は、スポーティな機能性と、ロングツーリングにも適したハイクオリティな感覚をバランスさせた居住空間を実現していた。

シティ・ターボIIのスリーサイズは全長3420mm、全幅1625mm、全高1470mm、ホイールベースは2220mm、車両重量は735kg。価格は123万円となっていた。

運転してみるとシティターボとの差は歴然としているが、それは特にコーナリングで感じられる。アクセルのオンオフで激しくアンダーステアやタックイン(FF車がアクセルオフでコー内の内側に回り込もうとすること)の癖が穏やかになり、オンザレール感覚でワインディングロードを攻め込むことができるのだ。もちろん、エンジンの性能やブレーキ性能の強化も感じることができ、スポーツカーのように思いどおりに操れるようになった。

『ブルドッグ』の愛称で親しまれたシティ・ターボIIは、ダイナミックフェンダーの迫力あるルックスとは裏腹に「いい意味で少し洗練された」ホットハッチであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    木原寛明

    Hiroaki Kihara

    1965年生まれ。玉川大学では体育会ノリの自動車工学研究部に所属し、まだ未舗装だった峠道を走りまくった。最初の愛車(本当は父のもの)は2代目プレリュード(5MT)。次がフルチューンのランサーEXターボ。卒業してレースの世界へと足を踏み入れたものの、フォーミュラまで乗って都合3年で挫折。26歳で自動車雑誌の編集部の門を叩き、紙時代の『AUTOCAR JAPAN』を経て、気が付けばこの業界に30年以上。そろそろオーバーホールが必要なお年頃ですが頑張ります!

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