【120年の歴史に幕】ヴォグゾール、英ルートン工場ついに閉鎖 労組と応酬

公開 : 2025.04.01 18:45

2025年3月28日、ステランティスは120年の歴史を持つ英国のルートン工場を閉鎖しました。今後ヴォグゾールの製造は、イングランド中西部にあるエルズミアポート工場で行われる予定です。

EV規制の影響で生産拠点を統合

2025年3月28日、ステランティスはヴォグゾールの製造拠点である英国のルートン工場を閉鎖し、商用車『ヴィヴァーロ』の最後の1台がラインオフした。これにより、ルートン工場は120年に及ぶ歴史に終止符を打つ。

この歴史ある商用車工場の閉鎖決定は、ヴォグゾールの親会社であるステランティスによって2024年11月に発表された。同社の英国での商用車生産は、イングランド中西部のエルズミアポート工場に移される。

120年の歴史を持つ英ルートン工場が閉鎖された。
120年の歴史を持つ英ルートン工場が閉鎖された。

ステランティスの前社長であるカルロス・タバレス氏は、ゼロ・エミッション車(ZEV)の義務化をめぐって英国政府と意見を対立させていた。その中で工場の閉鎖を予告していたが、数か月後に閉鎖を決定。タバレス氏は、ZEV義務化によってステランティスのビジネスモデルは大きな打撃を与えていると述べた。

自動車メーカーは、より多くのEVを販売することを強いられているにもかかわらず、購入者向けのインセンティブ(補助金)が提供されないなど、EVへの関心の低迷に苦しんでる。

ステランティスは、工場を移転させることによってすべての業務を1つの拠点に「統合」でき、「生産効率の向上が期待できる」とした。ますます厳しくなるZEV義務化目標を達成することも可能になるという。

ルートンの生産機械はすべてエルズミアポートに移され、そこで5000万ポンド(約95億円)以上をかけてアップグレードされる。

ステランティスによると、ルートンの閉鎖により1100人の雇用がリスクにさらされるが、エルズミアポートへの移籍が保証されているのはわずか数百人だという。影響を受ける従業員を対象に協議が始まり、移ることができない従業員には再教育や近隣企業での雇用の機会が提示された。

11月の発表後、労働組合の幹部はステランティスに対し、タバレス氏の辞任のわずか数日前に下された工場閉鎖の決定を撤回するよう求めてきた。

英国の労組ユナイト(Unite)は、この閉鎖の決定を「タバレス氏の失敗した戦略の最後の一例」と呼び、「会社が新しいCEOと新しい方向性を模索し始めた今、この決定は中止されなければならない」と述べた。

これに対しステランティスは、ジョン・エルカン会長と暫定執行委員会の指導の下、「すでに伝えられている進行中のプロジェクトの継続」を約束した。

ユナイトは、タバレス氏の後任が任命されるまで(2025年前半に予定)、これまでのすべての重要な決定を中止すべきだと主張している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    役職:ニュース編集者
    ニュース編集者としての主な業務は、AUTOCARのニュースの方向性を決定すること、業界トップへのインタビュー、新車発表会の取材、独占情報の発掘など。人と話したり質問したりするのが大好きで、それが大きなニュースにつながることも多い。これまで運転した中で最高のクルマは、アルピーヌA110。軽快な動きと4気筒とは思えないサウンドが素晴らしい。
  • 翻訳

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_
  • 編集

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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