ザガートとトゥーリングが「コーチビルド」事業に期待する理由 電動化は心配せず
公開 : 2025.04.02 06:45
ザガート、トゥーリング、ピニンファリーナのようなイタリアの有名なコーチビルダーは、電動化や新技術による価値観の変化を前向きに受け止めています。これからのコーチビルド事業の展望について3社に話を聞きました。
コーチビルドの復活:ザガート
「コーチビルディングが復活するかもしれません」と、ザガートの現CEOであるアンドレア・ザガート氏は自信を見せる。1919年の創業者の孫にあたる人物だ。
同氏は、これからの新しい時代を生き残るだけでなく、さらに発展できると確信している。「コーチビルディングの技術は500年もの歴史がありますが、自動車の歴史は150年ほどです」

「ザガートはこれまでにも、ありとあらゆる技術的変化を乗り越えてきました。わたしが入社したのは、他のコーチビルダーがどんどん消えていく90年代初頭の危機的状況の真っ只中でした。当社はそれらすべてを乗り越えてきました。技術の変化に対応できないはずがありません」
自動車におけるコーチビルディング事業が最も強かったのは、おそらく初期の数十年間だが、1世紀を経て、2つの異なる潮流によって新たなオーディエンスを獲得しつつある。それは、プラットフォームを共有したEVへの移行(フォードとフォルクスワーゲンの提携関係を見れば明らか)と、レストモッドやノスタルジックのトレンドである。
デジタルかアナログかに関わらず、個性的なデザインと精巧に作られたボディの必要性は、これまで以上に重要になっているかもしれない。
「わたし達は “ケース” デザイナーです。ですから、お客様の目に見えるもの、手が触れるものに集中しています。どのような技術がその下にあるとしても、わたし達にとっては大きな変化ではありません」
「自動車業界ではいくつかのトレンドが収束しつつあり、その1つが独自性に対する需要の高まりです。また、内燃機関のクルマでも、コンポーネントの標準化が進んでいます」
「ステランティスがその代表例です。わたしにとって、新型のランチア・イプシロンはプジョー208よりも見栄えが良いですが、中身はほぼ同じクルマです。スタイリングが購入の決め手になるかもしれません」
ザガート氏は、新しい技術を恐れるのではなく、むしろ積極的に取り入れていくと主張している。人工知能や3Dプリントは小規模プロジェクトに有益だとし、次のように説明する。
「型やツールに何千ユーロも投資する必要はありません。1台限りのワンオフ車や少量生産車のパーツを迅速に製造できるからです。当社はすでに3Dプリントで多くのワンオフ車を手掛けています」
「わたし達は、EVと内燃機関車の戦いによって生み出された技術的課題に直面しています。電気モーターが勝利を収めれば、業界の標準化は最大限に進むでしょう。大量生産車を所有したいと思わなくなる時代が来ると思います。レンタルしたり、利用したり、シェアしたりするようになるでしょう。デザインが差別化の主な要素となるかもしれません」
「人々は独自性やパーソナルな表現を求めています。これにより、コーチビルドがまもなく本格的に復活する可能性があり、レストモッドはその中間的な段階だとわたしは考えています」
ここで、ザガートとポーランドのコレクターズカーディーラー、ラ・スクアドラによるコラボ作品『AGTZツインテール(Twin Tail)』について考えてみよう。このクルマは、現代のアルピーヌA110に、60年代の耐久レーサーA220へのオマージュを込めたドラマチックなスキンをまとわせている。ロングテールを着脱可能とすることで、1台のクルマで2種類のボディスタイルを実現した。価格は55万ポンド(約1億円)を超える。
現代のモデルをベースとしているため、レストモッドの定義には当てはまらないとザガート氏は言う。
「これは典型的なコーチビルドであり、過去からインスピレーションを得て、A220の象徴的なストーリーを物語っています」
「コンセプトの現代化です。エアバッグや現代的な安全システムを搭載しています。タイムレスなデザインに現代のテクノロジーを統合しました。これがレストモッドとの違いです」
画像 「独自性」を追求した美しきコーチビルド作品【AGTZツインテール、ヴェローチェ12、バッティスタ・タルガメリカを写真で見る】 全24枚
コメント