無線アプデで乗り心地が変わる リビアンとR1Tで垣間見る未来(1) ソフト中心のクルマ開発

公開 : 2025.04.12 09:45

北米初のEVフルサイズ・ピックアップ 3モーターで850ps 無線アプデで乗り心地が変わる ソフト中心の開発を進める「変革請負人」 クルマ業界の未来をリビアンとR1Tで英編集部が垣間見る

ソフトウエアが中心の自動車開発

アメリカの新興バッテリーEVメーカー、リビアンは否応なしにテスラと比較されがち。とはいえ、量産車の第1号になったピックアップトラックを見れば、アプローチが異なることは瞭然だ。

テスラ・サイバートラックは、平穏な社会へ対立するような見た目が話題を集めた。かたやR1Tは、温かみのあるボディで包まれている。

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

イーロン・マスク氏は、自動車業界に波紋を呼ぶことを楽しむかのよう。ロバート・ジョセフ・スカリンジ氏は、あえて従来的な調和を選んだように見える。だがR1Tを観察すると、第一印象より遥かに革新的だとわかる。リビアンという会社も。

それが、フォードによる融資へ結びつき、フォルクスワーゲンとの協業へ繋がったのだろう。リビアンは自動車メーカーというより、ソフトウエア企業と呼んだ方が正しい。それでも、処女作から素晴らしい仕上がりにある。

同社のソフトウエア責任者で、フォルクスワーゲンとの合弁会社の共同CEOを務める、ワシム・ベンサイド氏へお話を伺う。「弊社は持続可能製の高い自動車を製造する、テクノロジー企業だと捉えています」

「業界へ混乱をもたらしたテスラを、大いに尊敬しています。ですが、伝統的な自動車メーカーもリスペクトしています」

「われわれにとって、ソフトウエアは後付けのものではありません。弊社の自動車開発では、それが中心です。ステアリングやアクセル、カーナビ、駆動用バッテリーや温度の管理まで、すべてソフトウエアで動作しています」

北米初の電動フルサイズ・ピックアップ

リビアンは、スカリンジによって2009年に設立され、様々な投資を得ながら知見を蓄えてきた。ここまでのプロセスは順調ではなかったかもしれないが、資本を使い果たしつつも、結果を導いた。R1Tは北米市場初の、電動フルサイズ・ピックアップになった。

発売は2021年。フォードF-150 ライトニングに先駆けて、アメリカ人にとっての乗用車を、電動パワートレインでカタチにした。マスクの尖ったアイデアの産物、サイバートラックより数年早く。

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

筆者は今、ネバダ州ラスベガス郊外の工業地帯にいる。リビアンのサービスセンターの前に、ブルーのR1Tが停まっている。

スタイリングは新鮮だ。この地で見るフルサイズ・ピックアップの多くより、印象は柔和。縦に長いヘッドライトを、ワイドなデイライトが結ぶ。グリルのないフロントマスクは近未来的で、後方には大きな荷台が付いている。

荷台の開口部には、電動で開閉するトノカバーが備わる。キャビンと荷台の間には、サイドからアクセスできる、広大なラゲッジトンネルが隠れている。フロントのボンネット下にある、荷室も広い。

ちなみにR1Tの隣には、次期モデルである電動SUV、R1Sも停まっていた。基本的には、R1Tの後方をワゴン状にしたモデルだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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