【ソウルモビリティショー2025】エンタメと新技術が融合!変わりつつある韓国自動車市場における情報発信の方向性

公開 : 2025.04.05 11:05

ソウルモビリティショー2025が4月13日まで開催中です。昨年は、釜山で行われましたが、ソウルで『モビリティショー』の名称を使用するのは今回が初めてとなります。現地で取材している桃田健史のレポートです。

モーターショーからモビリティショーへと名称を変更

日本から空路で約2時間半、韓国ソウルで開催されている『ソウルモビリティショー2025』を取材した。

昨年は、韓国南部の都市である釜山で、釜山モビリティショーが開催されていたが、ソウルでモーターショーからモビリティショーへと名称が変わったのは今回が初めてだ。

KINTEXで4/13まで開催中となる『ソウルモビリティショー2025』の様子。
KINTEXで4/13まで開催中となる『ソウルモビリティショー2025』の様子。    桃田健史

筆者が感じたキーワードは『エンタメ×クルマ』である。

会場であるKINTEXは、日本でいえば千葉の幕張メッセのようなイメージの大型展示ホールだ。中に入ると、全体的な展示のイメージとしては、いわゆるモーターショーに近い。それでも、CASE、MaaS、SDV、AIといった最新技術に関する韓国独自の出展がいろいろあり、韓国の自動車産業界が自ら変革していこうという意思を感じた。

ちなみに、CASEは通信によるコネクテッド、自動運転技術、シェアリングなどの新サービス、そして電動化を連携させる意味を込めたマーケティング用語だ。

MaaSは、モビリティ・アズ・ア・サービスで、公共交通などをIT技術を活用して最適化する技術や政策を指す。

また、自動車産業全体として注目が集まっているのがSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)で、ソフトウェアが自動車開発の軸になるという設計思想だ。

こうした各種技術については、2010年代半ば頃からグローバルで研究開発が進んできたが、量産化に向けては次のステップに向けた準備段階といった状況にある。特に電動化については、欧州、アメリカ、そして中国の政治的な思惑から需要が高止まりする、いわゆる『踊り場』にあるのだ。

そうした中で筆者が韓国で感じたのは、広義における『エンタメ』が自動車ユーザーに与える影響を上手くコントロールしている点だった。

ヒョンデの発表で感じたエンタメ

ここでいうエンタメとは、K-POPや韓国ドラマを指しているのではない。または、ワールドプレミアでプロジェクトマッピングを活用する、といったことでもない。

焦点は、ブランド戦略である。その筆頭は、ヒョンデだ。

会場で初公開された『ヒョンデ・アイオニック6Nライン』のリアビュー。
会場で初公開された『ヒョンデ・アイオニック6Nライン』のリアビュー。    桃田健史

今回ワールドプレミアとなったのは、燃料電池車の『ネッソ』と、中型EVの『アイオニック6』。ネッソは2018年に初代モデルが登場して以来、7年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

水素を活用する技術開発については、ヒョンデは1990年代から自社開発を進めており、トヨタBMW、GMなどと並ぶ、燃料電池車のパイオニアのひとつだ。今回は燃料電池システムが改良され、満充填での航続距離は700kmとした。

さらに、大きく変わったのが、ライフスタイル系のブランドマーケティング手法だ。クルマ本体としては、エクステリアで先進性だけではなく、日常で使うオシャレなクルマというイメージを主張している。

車内に入ってみると、インテリアも『アイオニック5』に代表されるヒョンデ独自の世界観があり、使い勝手と独自性が上手く融合している。

会場で流れている商品訴求用の動画では、買い物や通勤だけではなく、アウトドアでの活用もアピールし、ユーザーに対して燃料電池車をもっと身近に感じてもらおうという、エンタメ的な演出が興味深かった。

また、アイオニック6は従来からの独創性が強いボディスタイルがさらに強調されたデザインへ進化。合わせて、スポーティなNラインも登場した。さらに、本格的なハイパフォーマンスバージョン『N』の存在を予告するような画像も初公開する、エンタメ的な要素もあった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×