【そのすべてに意味がある】新型C4のデザインが正真正銘のシトロエンである理由

公開 : 2025.04.08 11:05

常に新しい挑戦でカー・デザイン界に一石を投じてきたブランド、シトロエン。6台に渡るシトロエン所有歴を持つ森口将之が、新型C4のデザインを軸に、そのフィロソフィを解説します。

世代ごとに大きく変わるシトロエンのデザイン

シトロエンはいつの時代も独創的なデザインで、全世界に話題を振り撒いてきた。昔の2CVやDSは言うに及ばず、最近でもアミやコンセプトカーのオリなど、自動車業界を驚かせるようなクルマを、相次いで世に問うている。

でもそれは、炎上覚悟の話題作りではないことを、これまで6台のシトロエンと暮らしてきた僕は知っている。最初は「なにこれ」だった造形が、使い込んでいくうちに「なるほど」に変わっていくことを、何度も体験しているからだ。

遠くからでもひと目でそれとわかるフロントフェイス。エンブレムも創業当時のデザインに。
遠くからでもひと目でそれとわかるフロントフェイス。エンブレムも創業当時のデザインに。    ステランティス・ジャパン

そのシトロエン、世代ごとにデザインが大きく変わることも特徴になっている。

近年はダブルシェブロンのエンブレムの両端を左右に伸ばし、その間にウインカーを兼ねるデイタイムランプを入れ、下にグリルとヘッドランプを離して置くフロントマスクが特徴だった。2014年に日本で発売されたC4ピカソあたりから、この造形が導入されたと記憶している。

この顔はその後、エンブレムから伸びるラインの端が矢尻のように開き、ヘッドランプはその中に収まって、ランプまわりで三角形を描くようになった。

さらにサイドについては、2年後に我が国に導入されたC4カクタスで初採用となった、エアバンプと呼ばれる衝撃吸収クッションを並べた太いプロテクションモールをアイデンティティとしてきた。

どちらも好き嫌いが分かれそうな造形ではあったけれど、日本はシトロエンを個性的なクルマと考える人が多かったので、好意的に受け入れられていたようだ。

しかし2022年、シトロエンはコンセプトカーのオリで新しいエンブレムやライティングを提案すると、これを市販車に投入。日本ではMPVのベルランゴに続いて、先日発売開始したC4にも採用された。

新型C4発売に合わせ、オンラインプレゼンテーションを実施

ではなぜシトロエンは、好評に思えた従来のデザインテーマを変えたのか。

新型C4の日本発売直前、チーフデザインオフィサーのピエール・ルクレール氏のオンラインプレゼンテーションがあり、そのあたりを解説してくれたので報告することにしよう。

シトロエンのDNAを受け継ぎながらも、よりコンペティティブになるために進化。
シトロエンのDNAを受け継ぎながらも、よりコンペティティブになるために進化。    シトロエン

通訳は、同じシトロエンでカラー&マテリアルデザイナーを務める柳沢知恵氏が務めた。現行シトロエンのフラッグシップであるC5Xのカラーやマテリアルを担当したことでもおなじみだ。

ルクレール氏は、2018年にデザインのトップに招聘されるにあたり、「変化を求められた」とコメント。ブランドのDNAを受け継ぎながら、よりコンペティティブになるための進化が必要と考えた。

当時のシトロエンは、たしかにわかりやすい表現であったが、同時に丸みを帯びたフォルムが多く、インテリアは豊富な色使いに好き嫌いがあったとコメント。むしろ最近はテクニカルな要素を入れる流れになりつつあると語った。

そこでルクレール氏は、シンプルさを守り、軽快に見せることは大切としつつ、丸いフォルムの中にシャープなディテールを入れることでコントラストを出し、自動車らしさにこだわるブランドとの差別化を狙った。コンセプトカーのオリは、そのビジョンを説明するうえで大切な1台だったとのことだ。

エンブレムを1919年の創業当初のスタイルに戻したのも、ルクレール氏の意向だった。そして、細いLEDのバーを3つ組み合わせたヘッドランプは、三角形をなしていたこの部分を置き換えたものと説明した。

LEDをこのように組み合わせた例はほとんどなく、同氏が言っていたように、遠くからでもひと目でわかる。それでいて多くの車格に適用可能というメリットもある。大胆に見えて考え抜かれたストーリーだったのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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