【行くのが大変なら呼んでしまおう】マセラティ・クラシケ日本展開に逆転の発想あり!木村代表に訊くクラシックへの想い

公開 : 2025.04.13 17:05  更新 : 2025.04.13 17:12

マセラティ ジャパンはオートモビルカウンシル2025において、本国で実施しているマセラティ・クラシケ事業を日本でも実施することを発表しました。同社代表取締役の木村隆之氏にその想いを内田俊一が訊きます。

日本以外で始めたら承知しないぞ

マセラティ ジャパンはオートモビルカウンシル2025において、本国で実施しているマセラティ・クラシケ事業を日本でも実施することを発表した。そこで、同社代表取締役の木村隆之氏にその想いを訊いた。

マセラティ・クラシケはクラシック・マセラティを保存、修復、正統性を認証するためのヘリテージプログラムとして、2021 年に本国イタリアでスタート。最初に認定証が発行されたのは1969年のミストラル3700で、それ以降グローバルで80台以上に認定証が発行された。日本では1968年式のギブリ4.7が取得している。

オートモビルカウンシル2025会場にてマセラティ ジャパン代表取締役の木村隆之氏。
オートモビルカウンシル2025会場にてマセラティ ジャパン代表取締役の木村隆之氏。    中島仁菜

日本からはこの1台のみで、その最大の要因はイタリア本国に車両を送る必要があったからだ。当然申請料に加えて輸送費やそれに伴う保険などを加えると、費用負担はそれなりになってしまう。そこで木村氏は本国からクラシケの審査に必要な人員を呼び寄せることを考えた。

「そうすれば、その人(本国のスタッフ)の旅費と宿泊代プラスアルファでできますよね。そういう構想を持っていて、ずっとやりたいと思っていたんです」と述べ、本国に交渉を続けていた。「この取り組みは世界初です。実は日本を最初にしないと承知しないぞ! と言っていました(笑)。イタリア以外のどこかでやるからには、日本が最初に決まっているだろうと、ずっとプレッシャーをかけていましたからね」と強い思いがあったことを明かす。

日本市場は世界で2番目

その理由は、日本がマーケットシェア(*)でイタリアに次いで世界で2番目、台数でもアメリカ、中国、イタリアに続いて4番目であること。さらにMC20の販売台数もアメリカに次いで2番目。同時にマセラティ・ファンとともにオーナーも多いということもあった。そこで本社も受け入れたという。

*マセラティが定める競合固有銘柄と自社を合わせた市場構成を100とした時のマセラティが占める割合

当然こういう取り組みは継続が必要だ。木村氏もこれは認めるところで、「お客様のためにやるビジネスですから、需要があればもちろん毎年やっていこうと思っていますし、ご要望が多ければ年2回にしてもいいかなと考えています」と語った。

300のチェックは必要なもの

その流れはマセラティ ジャパンのホームページ上で申請し、書類や写真、車両などを同社のアフターセールス担当が確認したうえで正式受付。今年は6月1~30日を受付期間とし、1980年までに生産されたモデルを中心に、発売から20年以上が経過したヒストリックカーや特別生産モデルで、最大8台を対象に審査を実施予定だ。

8台に絞る理由について木村氏は、「インスペクションのチェックは約300項目もありますので、1台で2日ぐらいかかってしまうんです。認定中古車の点検項目は121ですからそれよりもかなり多いんです」とのこと。

自身もクラシック・マセラティのオーナーである木村氏が、その想いを語る。
自身もクラシック・マセラティのオーナーである木村氏が、その想いを語る。    中島仁菜

また、「これはオリジナル性を担保するプロジェクトです。申請していただくクルマ達のオーナーは、自分は今このクルマを預かっているだけで、良い状態で次の世代に引き継いでいかなければならないと考えています。そこにメーカーが発行する正当な証しみたいなものがあった方がいい。だから申請するという考えなのです」とコメントし、その要望と信頼に応えるために必要な手続きだと強調した。

なお、金額はクルマとその年式で決まっており、これはイタリアと同じだという。つまりマセラティ ジャパンとしてはここで利益を生もうというのではない。

「我々は111年という歴史あるブランドです。そこで古いマセラティを大事にされている方に、正式なインポーター、ディストリビューターとして何もしないのではなく、こういう形でのプログラムも提供するブランドだと知っていただきたい。その結果として新車を買う方のモチベーションも上がるでしょう」と語った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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