デルタ、A110にトゥインゴ!ワイドボディに懸ける青春【新米編集長コラム#27】

公開 : 2025.04.13 17:25

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第27回は、オートモビルカウンシル2025にも出展した畑野自動車がテーマです。

いわゆる町の中古車さん

オートモビルカウンシルが、今年で10周年を迎えた。まずは、10年間続けてきてくださった主催者、関係者の皆さまに心からの拍手を送りたい。

2016年の第1回から毎回楽しみに取材してきたが、コロナ禍を乗り越え、今年はついにジョルジェット・ジウジアーロ御大の出演まで実現させたその熱意には頭が下がるばかりだ。

オートモビルカウンシル2025の畑野自動車ブースにて『ラヴァージュJP』(左)と『セラヴィー105』(右)。
オートモビルカウンシル2025の畑野自動車ブースにて『ラヴァージュJP』(左)と『セラヴィー105』(右)。    平井大介

さて、今年のオートモビルカウンシルに初出展となるショップがあった。それが今回のテーマとなる『畑野自動車』だ。

埼玉県草加市に店舗がある畑野自動車は、輸入車を中心とした中古車販売と車両メンテナンスを行う、いわゆる『町の中古車さん』だ。そんな彼らが、『セラヴィー105』と『ラヴァージュJP』と呼ばれる2台を展示した。

聞き慣れぬ車名かもしれないが、見てのとおり、ルノートゥインゴアルピーヌA110をベースとしたコンプリートカーである。共通するキーワードは、『ワイドボディ』だ。では、今回の出展に至るまでの流れをご紹介しよう。

モンスター・デルタを操るトップランカー

畑野自動車代表の畑野まさとさんと筆者は旧知の仲で、出会いは確か20年近く前、ランチアクラブ・ジャパンが主催するアマチュアレース、『デルタ・カップ』だった。私も少しだけ参戦した時期があり、何度も取材に通っていた。

当時彼は、極端なワイドフェンダーを装着するモンスター・デルタを操るトップランカーで、最終的には600ps(!)までパワーアップを果たしていた。しかし、当然のようにクルマが悲鳴をあげ、それを受け止めるボディと足まわりが必要となった。

その頃には楽しそうな匂いを嗅ぎつけたのか、開発には『設計班』と呼ばれるカーデザイナー、エンジニア、ファクトリーなどのプロフェッショナルがいつの間にか集結していた。そこでついに、片側105mmずつ全幅を拡大させた真のモンスター・デルタ、『フェニーチェ105』を完成させるのであった。海外からネットでアグリーと称された、切り貼り感のあるボディも、いかにもコンプリートカーらしい仕上がりとなった。

それを東京オートサロンに出展し、会場投票で決まるコンテストにて、インポート部門優秀賞を受賞したのが2019年の話。ちなみに、あのケン・ブロックも絶賛したと書けば、その評価の高さがわかるだろう。

草加のラーメン屋さんで意気投合

普通ならここで『物語』は終了するのだが、畑野さんの周辺にはなぜか人が集まるようで、フランスで誕生した新ブランド『ラヴァージュ』代表のベノワ・タレック氏と草加のラーメン屋さんで意気投合(!)。それが『ラヴァージュJP』誕生へと繋がり、今度は2023年東京オートサロンで、ふたたびインポート部門優秀賞を受賞するのだ。

ラヴァージュは、元ルノー・スポールでA110開発に携わったエンジニアが「もっと上を目指したい」という想いから、メルセデス・ベンツのシニアデザイナーであり、後にラヴァージュ代表となるタレック氏と共に新たに立ち上げたブランド。現行アルピーヌA110をベースに、往年のグループ4マシンをイメージした全幅+110mmのワイドボディを製作している。

2019年の東京オートサロンでインポート部門優秀賞を受賞した『フェニーチェ105』。
2019年の東京オートサロンでインポート部門優秀賞を受賞した『フェニーチェ105』。    平井大介

ラヴァージュJPは、『ラヴァージュ・ジャパン』として活動することになった畑野自動車が、本国ラヴァージュに最大限の敬意を払って開発したオリジナルモデル。車名の『JP』はもちろん日本を意味しており、今回オートモビルカウンシルに出展されたのが、まさにこのモデルだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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