マツダとロームが次世代半導体による部品を共同開発!気になるその目的【概要、本質、期待!自動車ニュースを読む】
公開 : 2025.04.14 07:05
毎日のように発信されるプレスリリースの中から1本をピックアップし、概要、本質、期待の3項目で分析するコラムです。ジャーナリスト橋爪一仁が、マツダとロームが発表した、次世代半導体による部品の共同開発について解説します。
【概要】自動車の技術革新に向けてGaNパワー半導体を共同開発
マツダとロームは2022年より電動駆動ユニットの開発と生産に向けた協業体制を組み、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を搭載するインバータ(可変周波数電源装置、電気自動車ではバッテリーからの直流電力を交流電力へ変換等で利用)の共同開発を推進してきた。
そして3月27日に両社は、新たに次世代に向けて期待されるGaN(窒化ガリウム)パワー半導体を用いた部品の共同開発で、自動車の技術革新を目指すと発表した。

GaNパワー半導体は、主流のSi(シリコン)パワー半導体と比較して電力変換における損失を低減でき、高周波駆動(電気信号の電波変換や微弱電波の増幅等)により部品サイズの小型化も図れるとされる。
その特長を活かした車両全体を見据えたパッケージや軽量化、デザインを革新するソリューションとするべく両社で共創を図り、2025年度中にコンセプトの具現化とデモ機によるトライアルを実施して、2027年度の実用化を目指す。
マツダの廣瀬一郎取締役専務執行役員兼CTOは、カーボンニュートラルに向け電動化が加速する中、ロームとの協業を嬉しく思い、半導体とクルマを双方向で直結させた新たなバリューチェーンの共創に取り組むと表明。
また、ロームの東克己取締役専務執行役員は、『走る歓び』を志すマツダと協業できること嬉しく思い、高周波動作可能なロームの『EcoGaN』とその性能を発揮させる制御ICによるソリューションは小型化や省エネ化の鍵と表明した。
【本質】GaNパワー半導体の共同開発と公表の意義
そもそも半導体とは、電気を通す(通しやすい)『導体』とほぼ通さない『絶縁体』との中間の性質を有し、使い方次第で電気を通すことも通さないこともできることから様々に応用。
ロジック半導体(コンピューターの演算等)、メモリー(SDカードの保存等)、アナログ半導体(各種アナログ信号をデジタル変換等)、パワー半導体(電流や電圧の制御等)などがIC(集積回路)を構築して利用される。

かつては半導体の原料にGe(ゲルマニウム)が多く用いられたが、現在は加工性が良く高い品質と廉価を両立できるSi(シリコン)が主流であり、それよりも電気抵抗が小さく、高電圧や大電流への耐性も高いGaN(窒化ガリウム=ガリウムと窒素の化合物)パワー半導体は次世代を担うと研究開発が進められている。
EV(電気自動車)や5G(第5世代移動通信システム)、大規模データセンター等の進化への一助として寄与することが見込まれるが、実現には製造プロセスが複雑で品質保証や高コストといった課題も持つ。
そして、今のタイミングで発表することの意義は大きくふたつある。ひとつは日本屈指の半導体メーカーであるロームとの協業による手の内化や共同特許等による『技術の囲い込み』。もうひとつは、次世代の活路を世に発信することで『株価への好影響』の期待があると捉えられるものの、ちょうどアメリカのトランプ大統領が関税の引き上げを発表したタイミングもあって、効果はまだ確認できていない。
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