【渡辺敏史が都内で試乗】オープンカーでマウントを取れる?フェラーリ・ローマ・スパイダーは究極の選択肢

公開 : 2025.04.14 11:45

V8エンジンをフロントに搭載するフェラーリ・ローマ・スパイダーに都内で試乗します。オープンカーでマウントを取りたい向きにとって、究極の選択肢ともなり得る存在だと渡辺敏史が感じたその理由とは?

フェラーリのトラッドなスタイルを今に伝える

フェラーリの設立間もない1950年代以降、F1を筆頭とした彼らのモータースポーツ活動の原資となったのはストラダーレのセールスだ。その基本形は長らく、フロントエンジン・リアドライブのラグジュアリーな2+2クーペだった。

広義的には412や456GTや612スカリエッティがその正統後継にあたるが、顧客層の拡大に伴うニーズの多様化に応えるべく2010年前後からは、カリフォルニアやFF(フェラーリ・フォー)がその役割を模索してきたということになるだろう。

ローマはクーペとスパイダーを独立した存在とすることで、各々の価値をより高いものとした。
ローマはクーペとスパイダーを独立した存在とすることで、各々の価値をより高いものとした。    山本佳吾

カリフォルニア〜ポルトフィーノの流れを汲む『ローマ』もまた、フェラーリのトラッドなスタイルを今に伝えるモデルだ。搭載するエンジンは8気筒ながら、その意匠はお歴々の様々なエレメントを見る者の思いに沿って垣間見せてくれる。

ちなみに登場当初はあまり思い浮かべなかったが、近頃はその向こうに365GTC/4の影も感じたりするのは僕だけだろうか。

文明的なリトラクタブルハードトップを得たことでクーペとオープンの役割を1台で果たしていた前世代と異なり、ローマはそのふたつを独立した存在とすることで、各々の価値をより高いものとした。

ローマの趣意として掲げられる『ドルチェ・ヴィータ=甘い生活』は、クーペのように秘匿めいたものとも、オープンのように明け透けなものとも解釈することが出来る。言い換えればいま、幌屋根のオープンという新たな選択肢ができたことで、敢えてクーペを選ぶ粋が際立つようになったわけだ。

クーペに対して大きく見劣りのないシャシー剛性

『ローマ・スパイダー』のパワー&ドライブトレインはクーペと共通で、3.9LのV8直噴ツインターボは620psを発する。トランスミッションは8速のDCTで、320km/h以上と称される最高速も3.4秒の0-100km/h加速も、データ上はクーペとの差はないに等しい。

屋根の有無は間違いなく走りに影響するはずだが、ローマ・スパイダーは前任ともいえるポルトフィーノMのリアセクションを改良しながら採用したことに加えて、Aピラーやサイドシルなどの強化によって、クーペに対して大きく見劣りのないシャシー剛性を得ている。

デイトナ・スパイダー以来、実に半世紀以上ぶりだというFRフェラーリのソフトトップ。
デイトナ・スパイダー以来、実に半世紀以上ぶりだというFRフェラーリのソフトトップ。    山本佳吾

クーペに対する重量差は84kgに抑えており、重量差による動力性能の低減も誤差レベルであることは前述の0-100km/h加速が証明済みだ。もちろん、パワーとトラクション能力による後ろ支えも無視はできない。

フェラーリのFRオープンモデルとしては365GTS4、いわゆるデイトナ・スパイダー以来、実に半世紀以上ぶりだというほどレアだった幌屋根は、5層構造で静粛性や耐候性においては従来のリトラクタブルハードトップと遜色ないという。

一方で表皮のカラーやテクスチャーは多彩で、ボディ色と絡めながらファブリックならではの風合いが愉しめる。

幌屋根の開閉に要する時間は13.5秒程度で、60km/h以下の速度であれば走行中でも開閉操作が可能と、使い勝手的にも申し分ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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