テスラ・モデルS P85 D
公開 : 2015.03.02 23:30 更新 : 2017.05.29 18:47
■どんな感じ?
P85 Dのポテンシャルをフルに引き出すには、大型のタッチスクリーン上にある ’Insane(=正気の沙汰にあらずの意)’ ボタンを押す必要がある。
加速を試みると、砂利の混ざった濡れた路面などをものともせず、怒涛の加速を見せつけてくれる。50km/hに至るまでのプロセスなど、まさにタイムワープそのものである。
どこか物足りなく感じるのはエグゾースト・ノートがないから。同じ0-100km/hタイムでも、やはりフェラーリ458のような、あるいはAMG謹製V8ユニットのような音が恋しくなるのはクルマ好きの性だろうか?
代わりに耳に届くのは、ツイン・モーターの発するシャーンという音。あとはタイヤが雨を巻き上げる音のみである。未来的といえば未来的だ。
思い切ってオーバースピードでコーナーに飛ぶこむ。基本的には85のそれと同じではあるが、アンダーステアは強め。後輪はこちらの想像以上に前輪を巻き込んでいく。
ただし驚かされるのは、速度域に依存しないコーナリング上でのフラット感。また路面の状況に左右されにくい低速域の乗り心地も印象的である。ノルウェーでの公道テストの成果とも言えるだろう。
しかし車体とドライバー間のコミュニケーションは希薄なもの。3種類からステアリングの重さを選べるものの、スリルや喜びの類は期待しない方がいい。もっとも、これは他のモデルにも共通していることなのだが。
60km/hを超えたあたりからは大径のアロイ・ホイールに起因するコツコツといった当たりが気になり始める。騒々しいというと言いすぎになってしまうが、電気自動車に求めるほど静まり返ってはいない。
反面、大人5人の乗車を見据えたパッケージングはかなり上手い。さらに後部の荷室に設置される、折りたたみ式のシートを起こせば子供2人が座れる点も評価できる。1800ℓに及ぶ荷室容量も十分に魅力的だ。
内装の仕上げは多くのアメリカ車と比べると、大差をつけて上質ではあるが、ヨーロッパのエグゼクティブ・モデル勢に比べるとあと一歩の感は否めない。
車内でもっとも目を引く17インチ・スクリーン上のシステムの完成度はまずまずのものではあるが、その挙動には時に不安になることもある。決して悪くはないが、先日試乗したボルボXC90の方が優れていると感じた。
反面、音楽ストリーミングサービスRdioと協力したことにより、ステアリング・ホイールにマウントされたボタンや音声から、聴きたい音楽をリクエストできる点は(動作スピードは置いておいて)便利である。