なぜVWゴルフは「エントリーグレードが最高」なのか 英国記者の視点

公開 : 2025.04.15 18:45

GTIやクラブスポーツもあるけれど、エントリーグレードのフォルクスワーゲン・ゴルフには必要なものがすべて揃っており、不要なものは何もありません。ごく普通のモデルが一番良い。AUTOCAR英国記者のコラムです。

過不足なく「ちょうどいい」

最近、編集部のオフィスでいつものように雑談をしていたら、話題はいつしか、「歴代最高のフォルクスワーゲン・ゴルフはどれか」という厄介なテーマに変わった。

最終候補リストには、当然のことながら、ハイパフォーマンスバージョンが世代を超えてずらりと並んだ。GTI、R、R32、16v、クラブスポーツなどだ。中にはW12-650を推す人もいた。

フォルクスワーゲン・ゴルフ
フォルクスワーゲン・ゴルフ

素晴らしいリストで、多くの議論を巻き起こしたが、正解は明らかにMk7.5 GTIだ。オッケー、これ以上の質問はなしだ。

しかし、速くて楽しいゴルフを称賛するあまり、何かを見落としているように思う。世代に関係なく、コストパフォーマンス、全般的な使いやすさ、快適性を考慮すると、筆者にとって最高のゴルフ、最もゴルフらしいゴルフは、ごく普通のベースモデルだからだ。

例を挙げるとわかりやすいかもしれない。数年前、筆者はAUTOCARの長期テスト用車両として、ゴルフMk8のエントリーグレードのライフTSIとGTIを続けて運転した。

間違いなく、GTIの外観はシャープで、内装も豪華だった(タータンチェックはたまらない)。そして、舗装道路では、よりシャープで楽しい走りを見せた。では、最終的にどちらを気に入ったか? もちろん、それはエントリーグレードの方だった。

日常的な運転では、使い勝手が良く、リラックスして快適に使用でき、妥協を強いられることなく、ほぼすべての点で期待に応えてくれた。

どんな段差も耐えられるほど乗り心地が柔らかく、車内は心地よくて、必要な装備もすべて揃っている。運転は楽しく、購入や維持費も安く、アルミホイールを傷つける心配も少なかった。

そして、それらすべてを、7世代前のモデル同様、まったく問題なくこなしてくれた。

どんなクルマに乗っているかによって、その人を判断することもあるだろう。しかし、標準的なゴルフに乗っている人を悪く思うことは不可能だ。ゴルフのドライバーを見て、エンブレムに高いお金を支払っていると思うことはないが、クルマのことを知らないとか、興味がないとも思わないだろう。

なぜ自分の車庫に合わない大型SUVを買ったのか、疑問に思うこともない。むしろ、「必要なものはすべて買い揃え、不要なものは何も買わない人だ」と思うだろう。

まさに、ごく普通のエントリーグレードのゴルフは、クルマの世界における「小さなお椀のお粥」のような存在だ(童話『ゴルディロックスと3匹のくま』に出てくる子熊のお粥)。熱すぎず、冷たすぎず、ちょうど良い。これはフォルクスワーゲンのラインナップに限った話ではなく、自動車業界全体に言えることだ。

過去50年間、あらゆる面で優れた能力を発揮し、ほとんど期待を裏切らないクルマが欲しいと思ったら、デフォルトの選択肢はゴルフであった。それもありきたりの、エントリーグレードのゴルフだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×